第6話「恋とは恐ろしいものですわ」最終話


「遅くなりました。フリード殿下」


フリードの護衛の一人がフリード様に声をかける。


「遅いぞ、今まで何をしていた?」


「申し訳ありません。

 フリード殿下がアリア様にお会いになる為に、馬車を降りた途端に走り出したので殿下のお姿を見失いました」


フリード様ったら私に会うために、校門からここまで走って来てくださったの? 嬉しいわ。


でも護衛の人をおいてきてはだめよ。


「フリード様、この女をいかがいたしましょう?」


「このアホ王太子と共に牢屋に入れておけ、皇族への不敬罪だ」


フリード様が王太子殿下を護衛に向かって突き飛ばす。


「承知いたしました」


護衛の人たちが王太子殿下とミラ様を縛りあげ、どこかに連れて行った。


二人がいなくなり、ようやく静かになった。


「あんなのがアリアと同じ学園にいるのは危険だ。

 アリアが学園を卒業するまで奴らは牢屋に入れておこう」


廃太子されたガラン様は王妃様の実家の伯爵家に養子に入り、ミラ様の家に婿入りする予定でした。


お二人はフリード様に狼藉を働いたので、その話もなくなるでしょうね。


婚約破棄の慰謝料として王太子殿下の所有していた財産は全て差し押さえました。


足りない分は王妃様のご実家の伯爵家に支払っていただきました。


一人息子のガラン様は廃太子され、ご実家の伯爵家の資産の半分は差し押さえられた……これで王妃様の求心力もなくなるでしょう。


もしかしたら王妃様は身分を剥奪されガラン様と共に、塔に幽閉されるかもしれません。


「ところでフリード様、どうして学園に?」


「アリアの側にいたくて僕も今日からこの学園に通うことにした。

 転校初日だから制服じゃないのは許してほしい」


フリード様は天色のジュストコールを身にまとっている。


もしかして私の瞳の色の服を着てくれたのかしら?


「本当はアリアを帝国に連れて行って、帝国の学園に通わせたかったのだが、この国の貴族はこの学園を卒業する決まりがあるんだろ?」


「そうですが、フリード様は帝国の学園に通わなくてよろしいのですか?」


フリード様は私と同じ十七歳。


フリード様は帝国の学園に通われていたはずですが。


「帝国の学園は一年休学する」


「そんなことしてよろしいのですか?」


確か皇族は帝国の学園を卒業する決まりがあったはず。


「帝国の学園はこの学園を卒業してから通うよ。

 やっとアリアと婚約できたのに、アリアと一年も離れて暮らすなんて耐えられない!

 アリアも一緒に帝国の学園に通ってくれるだろ?」


「それは構いませんが、なんでもフリード様お一人で決めてしまうのはいかがなものかと思います」


「ごめんね、嫌だった?」


フリード様が眉尻を下げる。


そんな捨てられた子犬のような顔をしないでください。


怒れなくなってしまいますわ。


「いいえ、ちっとも嫌ではありません。

 むしろ嬉しいです」


「良かった」


フリード様が花がほころぶように笑う。


フリード様にほほ笑まれるとすべてを許してしまう。


今日から自由に生きようと思っておりましたのに、フリード様の笑顔にほだされて流されてしまうなんて……恋とは恐ろしいものですわ。





――終わり――




最後まで読んで下さりありがとうございます。






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「今日から私は好きに生きます! 殿下、美しくなった私を見て婚約破棄したことを後悔しても遅いですよ!」完結 まほりろ @tukumosawa

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