覚悟の帰郷

ケー/恵陽

覚悟の帰郷


 地面に大の字になって寝っころがる。もうこの土地には誰もいない。故郷の村は誰もいない荒れ野原になっていた。かろうじて残る家ももうボロボロで、雨を凌げればいいほどだ。

 数年前、この地方は酷い干ばつに襲われた。田舎の小さな村などに王国は助けの手を伸ばしてくれなかった。けれど自分もそれは同じだ。

 噂を聞いた。

 もしや、と思った。

 しかし、足を向けなかった。

 もしも、などという言葉は意味を持たない。選択したのは自分なのだ。だが気にして、故郷へ足を延ばしていれば、何かが変わったかもしれない。

 明かりのない夜には星空がよく見えるはずなのに。自分の目には歪んで見えた。


 朝日に目を覚ますと、足元にふわふわした感触があった。妙に暑苦しい。

 体を起こせば、足先に毛玉が丸くなっている。濁った茶色にごわごわした毛。起きたことがわかったのか、毛玉も形を変える。ハッ、ハッ、と舌を出すのは犬だ。

「お前、どこの犬だ? 野良?」

 訝るとどこか懇願するように腕に擦り寄ってくる。人に慣れていることからもしかしたら誰かの飼い犬だったのかもしれない。体に触れれば、やせ細っていることがわかる。

「一緒に来るか?」

 訊けば、更に強く擦り寄ってくる。

「じゃあ、お前はブラウンだな」

 ワフッ、と返事が来た。

 今この時から、相棒が出来た。


 ちなみに町で相棒を洗うと真っ白の毛並みになった。

 

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覚悟の帰郷 ケー/恵陽 @ke_yo_

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