【fairydevice-妖精素子-】

 魔法とはなにか?元々その体系を持った形式は確かに存在した。人間の意識とは馬鹿に出来ないものでその意識の力、心や魂と言われるモノがどれほど現実を変化させ自らをも変質させているのかを実感する事は少ない。


 やがてこの現実世界の片隅で、全く異なる“異かい”を認識する機会が出来た。我々はそれを探索する組織を設立した。創立ではない。


 その“異かい”は世界中、地中でも海中でも、至るところに様々な形式で通路を開く。それが無作為なのか、意図、作為があるのかは現在でも明らかになっていない。しかしそれらを意図的に開く技式を開発する。


 その式を開示した存在からの恩寵として、その名を冠しまた親しみを込めた。言語体系や異言と呼ばれる“異かい”の作法を利用する事によってこの世界でも利用可能な技術。


 「このマニュアル...改訂されたのか」ぼそりと言うと、幾つか来期で刷新されるみたいだと近くの同僚が言った。それ以上の声はなかったが、この場所には色んな職種や個人的な才能を持った人達で溢れかえっている。


 服装は同じで、ジャンプスーツの上からそれぞれ違った規範のジャケットを羽織っている。そこには紋章が描かれ、円の中に折れ曲がった木が描かれていた。


 手には分厚い本や電子ペーパ、端末を持って歩きヘッドホンを肩に掛けて歩いているものもいる。中には護符を大量に付けて歩く近づいちゃダメな人も散見された。


 けれどここには人権がしっかりと存在していて、受け入れられている。本当に混濁とした世界観で形成された組織だ。だから自分もいられると感じる。


 【base-基地-】にはそれぞれの区画と塔が建造されている。とても美しいと思えたりとても歪曲していて自身の美醜感覚がバグを起こすような、そんな不明瞭な意識を感じさせる。この異かいは、人間の意識をどう診ているのだろう?


 ただ、見ているのだろうか?

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