オットー・オブライエン

 「オットー、これ」彼女が渡して来たペーパーバックを見ると、オットーは短く感嘆した。魔法遣いの異かいでの出来事、共有すべき案件、新たに発見された破道の使用方法や危険視される生物の知見などが簡潔に書かれている。


 「隠れた災禍をまた転化出来たのは本当にすごいや」オットーはそう言うと天井を仰ぎながらペーパーバックの広告に集中した。


 「そこじゃない。オーエン...君はもっとやれるヤツだ。知っているのにしないのは、中々だぞ?」マスコットみたいな容姿の人形がカタカタと小言を言うので、オットーはひどく退屈で卑屈な気持ちになった。


 「マーシュ、もっと静かにしてくれ。君はとても軽いウエイトで話が出来るハズだ。外れクジを引いた客がうちに来てきっと愚痴をこぼしながら君を引き取ってくれるよ」そう軽口を叩きながらペーパーバックを読みすすめた。


 「いや、きっとそのクジを持った客が罵詈雑言で君を罵って、私がどれほど希少なモノかを君に教えてくれるだろう」マーシュはそう声で微笑みながら喜々として語った。


 「そうね。その方がオットーにはいいんじゃない?」彼女はそう言って口角を上げた。屈託のない邪気を程よく持った彼女は、とてもチャーミングで美しかった。

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