異かいの國
花が咲いていた。とても聡明な色彩をしている。その花に手を伸ばすと、別の柔らかい手がそれを阻んだ。
「触らないほうがいい」線の細い声が流れた。とても丁寧に、人間の声を録音して高度な機器で出力したような音がする。微かな息遣いすらも、鼓膜に浸透しやすいように調節されているみたいだ。
その花をもう一度見ると、渦を巻き、石のような質感の異彩豊かな鉱物になっていた。臭気のような歪んだ光を放っている。
「この場所にあるモノは、気を許していい事が少ないんだ」そう返事が返ってきた。確かに、この世界を取りまく物事は、すべてが嘘と真実をない交ぜにして悟られるのを拒んでいるようだった。息をする瞬間まで、それが空気であるのかも恐ろしくさせる。吐いた瞬間に、他人の命を奪うものになっているよな・・。
「それでも、信じるしかないんだよ。君が信じるモノだけが、君を救うのだから」微かな望みだけを、気の遠くなるほどの時間で圧縮を繰り返す。その瞬間に散る火花を、人は奇跡と言って珍重しているのかもしれない。
その火花は、今ヒトのカタチを取っている。数多の望みと願いを、純粋なモノが集約し、火花がそれを形にした。
古びた木々、錆びた剣が刺さっている。まばたきの回数だけ、まるで間違い探しのように少しずつ変化が起こる。不確かで、真実が見えにくい。現実から理想をはく奪したら、きっとこんな世界なのだろう。
使えるかい?そう声がする。魔法使いは杖をゆっくりと前に向け、真実の嘘、夢の現実、信念の側面、妄想の幻想と言った。
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