桜のような恋でした。
瑞稀つむぎ
第1話
僕は、大きな桜の大木の下で綺麗に踊る桜の花びらを見ている。
そして、君の事を思い出していた。
その笑顔が、その声が、可愛らしく桜のように咲いていた。
そんな君は桜のようでした。
桜のように、淡くて。
桜のように、儚くて。
桜のように、美しくて。
春のように、あっという間の恋でした。
君は、あっという間に僕の元を去っていった。
いつまでも続いてゆくと、そんな気がしてたのに。
大切なものって、すぐに消えるよね。
僕の恋は舞っていく。
風が吹いて散るように。
はらはらと散るように。
僕は、ただそれを見ることしか出来ない。
それが、ただただ虚しい。
あの風が君を連れ去ってゆく。
空に舞う僕の桜。
僕は、それを見上げる。
無数の数の花びらが空に舞う。
だけど、その中のひとつが無性に輝いて見える。
そっか。君なんだね。
僕は声に出さず、そっと君に微笑む。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
覚えてるかな?
それは、突然の出会いだった。
何かの用事で教室で二人きりだったよね。
なんてことない台詞ばかりの会話をしていたよね。
でも僕にとってはぜんぶ忘れない。
きっと、忘れない。
一生、忘れないから。
花って、散りゆくから綺麗なんだってさ。
儚いから、美しいんだって。
そんなこと、今さら言われても困るよね。
笑っちゃうよね。
それにさ、そんなこと知らないあの時の僕になにが出来たっていうのさ。
言葉にならない君の『さよなら』。
その言葉は、聞きたくない。
まだ受け入れられない。
でも僕の前にもう君はいない。
それが、事実。
抜け殻さえ粉々になって。
もう、何処にもいない。
儚いから綺麗なんだってさ。
知らないよ。そんなこと。
そんなこと灰色になった今更、聞きたくないよ。
君はいつも大事な事は、言わないよね。
ほら、あの時だって病気のこと言ってくれなかったよね。
なんで、言ってくれなかったんだよ。
悲しかったんだからな。
君が僕の事を気遣ってくれたのは、わかるけど。
やっぱり、言ってほしかったよ。
だって、好きだから。
でも。
ありがとう。
それだけは、伝えたい。
僕は君が大好きでした。
君のおかげで、毎日が楽しかった。
君のおかげで、僕の日常に花が咲いた。
君のおかげで、儚さというものを知れた。
君のおかげで…。
もっともっと、伝えたかった。
もっともっと、一緒にいたかった。
でも、君はいつも僕に姉のような態度を取ってくるから、こんなこと言ったら、
「もっと、前を向け。」とか、「それでも、男子か。」とかちょっと強気に言うんでしょ。
でも、知ってるよ。
ほんとは、君が強くないってこと。
我慢してたってこと。
でも、それを我慢していた君は強い。
空耳かな。
でも、君の声が聞こえた気がする。
「 」
「うん。わかった。ありがとう。」
花びらは空の彼方へと消えていった。
桜のような恋でした。 瑞稀つむぎ @tumugi_00
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