第2話 彼女の行方
早見は事務所内を落ち着きなく歩きまわっている。
「ちょっと、何があったんですか。業務に支障をきたしていますよ。」
介護リーダーの沖に声をかけられ、早見はやっと我に返る。
ーーこんなところで、折れるわけにはいかない。
「何でもないですよ。早く業務に戻ってください。」
早見はいつも通り冷たく言い放ち、平静を装うが汗がしたたり落ちる。その姿を見て、沖はうすら笑いを浮かべながら事務所を出た。
早見は施設の外に出て周りに人がいないことを入念に確認し、看護部長に電話をかける。
「山田さんの行方はわかりましたか。はい、それではそのように進めます。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。失礼いたします。」
早見はそう言って電話を切ると、ホッと胸を撫で下ろした。山田の行方はわかっていないが、そんなことは関係なく早見が看護リーダーになるという看護部長からの言葉であった。
早見は早速ホウレンソウにメッセージを送信する。
「私が看護リーダーになることが正式決定しました。皆様、よろしくお願いいたします。尚、このグループチャットは新しいものを作成しますので、削除します。」
送信を終えると、早見は小さくガッツポーズをした。
彼女が仕事を辞めてから。 のざきゆりこ @yukko_
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