第5話 盗賊の襲撃

「そんなことがあったんですか....。まぁ、大事に至らなくてよかったです」


馬を連れ戻していたクラベに休息場から出発してから森の中でなにがあったのか経緯を説明していた。


「にしても、そのシュラルトさんでしたっけ。ジャイアントベアーを一振りで倒すなんてとんでもない怪力ですね」


荷物が乗った馬車には窮屈なのか、ジャイアントベアーの上半身がはみ出てしまっているのを目にしながら、馬車は進んでいた。


「私も初めはビックリしてましたよ。今では慣れっこですけどね」

「でも、それだけ実力があるのになんでEなんです?聞いた限りAランクでも妥当な強さですけど」

「いやぁ、頭がちょっと悪くてね」

「ちょっと悪い?」

「あいつ、金銭感覚が狂ってるし、捕獲だって言っているのに倒しちゃうし.....まぁ、いろんなことがあってね。今は多少はマシになったけど」

「そんな感じなんですか....」

「そういえば、コバットさんが休憩の前に言ってましたけど、なんで最近この森の魔物の気がたっているんですか?」

「なんで....ですか。なん日か前....って言ってもそこそこ前なんですけど、森で突発的な地震が起きたことが原因じゃないかとよく言われていますね」


おそらく、シュラルトが起こした地震のことだろう。


「あの地震か....」

「ええ、おそらくそれのせいで気が立っているのではないかとの説が今のところささやかれてはいます」

ピアは額の汗の感覚が強く感じた。

「まぁ、しばらくすればギルド直轄の部隊が解決してくれると思いますから、ゆっくり待ちましょう。何はともあれ、私たちの仕事が増えているんで、前向きに捉えましょうよ」

「そ、そうですね....」



馬車の依頼者からジャイアントベアーの追加の報酬を受け取り、さらにコバットらからその素材報酬を受け取って宿に向かっている最中だった。

日は暮れ、建物の窓から漏れ出る明かりが照らすだけの人の気配があまりない路地を歩いていた。


「今日は大変だったな」

ピアの横を共に歩きながらピアと話していた。

「大変だったって....ほとんどコバットさんたちが

「....ん?」


シュラルトが突然背後を振り向く。


「....どうした?」

「いや、なんか気配を感じるなって」

「どんな気配?」


ピアがシュラルトと同じ視線の方向を見るが、暗闇だけが広がっていた。


「なにもないじゃん。行こう」

「....」


しかし、シュラルトは立ち止まる。


「置いていくよ〜」

「待ってくれ」


シュラルトはピアに走って向かった。


追いついてからも、背後の気配が気になるのか、宿に着くまでキョロキョロと目が泳いでいた。

夜遅くと言うこともあったが、雇い主が用意していた宿に入り、チェックインを済ませた。


「はぁ〜今日はとびっきり疲れた〜」


自室に着いたシュラルトは子供のようにベットに飛び込んだ。


「ちょっとちょっと、鎧を外してからにしてよ」


ピアは装備と下着の着替えを持って押入れに入ろうとしていた。


「別にここで布団にうずくまってるんだから、そこに入って着替えてもいいんじゃないの?」

「バーカ。そう言って見ようとしているんでしょ?」

「そんな、着替えなんて恥ずかしいものでもないじゃん」

「普通の人は見られたくないものなの!」


ピアは押入れに入り、着替え始めた。


「あのね、お前にはモラルってのがないのか?裸で外歩いていけんのか?」

「寒いからいやだなぁ」

「そういう問題じゃない」

「....ん?」


シュラルトに押入れ越しで話していたが、急に黙り込んでしまった。


「どうした?何かあった?」


シュラルトがベットから降りた音が聞こえる。

ドアに行くわけもなく、足音はすぐ止まった。


「おーい、聞いて---」


次に瞬間、ガラスが割れる音が聞こえた。


「な、何をした!ってうぁ!」


ピアが押入れから顔だけを出し状況を見る。窓ガラスどころか、枠組みさえも派手に弾け飛び、シュラルトが盗賊とも言える姿をした人が部屋の窓側にいた。


「ピア、下がってろ!」

「え、え、え?」


混乱している中、盗賊はすぐさま立ち上がりシュラルトむけて2本のショートソードを両手で持ち、襲いかかる。

一方、シュラルトは大剣を床に置いていたため使えず、素手で戦う状況になっていた。


「そりゃぁ!」


しかし、シュラルトはその振りかぶってきたショートソードを握り潰し、なんと粉々に破壊してしまった。


「なに!?」


これには盗賊も予想外であったのか、目を大きく見開き粉々になった剣先を見ていたが、すぐに我にかえりもう片方の手に持っているショートソードでシュラルトの顔を切りつけようとする。

しかし、


「そうはさせん!」


シュラルトの顔面目掛けてきた短剣は、シュラルトの歯によって爽快な音を出しながら食われてしまった。


「えぇぇぇ....」


これにはピアも驚きから引き気味になってしまった。


「....っ!くそ」


戦う武器が壊された盗賊は持っていた取手を投げ捨て、窓から逃げようとした。


「にがすか!」


シュラルトはすかさずかわし、盗賊が宙に浮くほど強く振りかぶり床に叩きつけた。

そこから盗賊はピクリとも動かなくなってしまった。


「....大丈夫だったか?」


混乱していたピアが正気に戻り、シュラルトに話しかけた。


「なんだなんだ?」


騒ぎを聞きつけた宿の人たちが集まってきていた。


「あぁ〜えっと....なにがあったの?」


シュラルト方を振り向き、説明をさせるように促した。


「なんか、窓から急にこいつが入ってきたから倒しただけ」


簡素すぎる答えにみんな固まる。


「なにがあったっと思ったらお前らか」


民衆をかき分けて部屋に入ってきたのは、この日一緒にクエストを受けたBランクの2人であった。


「コバットさん、クラベさん」

「お前らも、面倒な奴らに目をつけられたなぁ」


倒れ込んでいる男の前に座り込む。


「面倒ってなにがだ?」

「この姿、おそらくガブソリュートだろう」

「ここら辺の国で主にスリを働いているやつらですね」


ガブソリュートはハイター帝国を中心とする盗賊集団であり、他の盗賊と違って嫉妬深く盗むか殺すまで追ってくる野蛮な連中である。


「っていうことは、ここに来るまでの気配はこいつだったのか」


シュラルトが帰り道に突然振り向いたりしていたのはこいつだったようだ。


「帰り道から追われてたんですか....まぁ、この時間だからしょうがないと思いますが、ここまで執念深く追うやつもいるんですね」

「さて、こいつはあとで騎士団にでも引き渡そうかね」


と、盗賊の衣服を捕えようとした直後、

「....っ!」

掴まれたローブをトカゲの尻尾のように身代わりにし、盗賊が割れた窓から逃げていってしまった。


「あ、逃げやがった!」


シュラルトが窓から身を乗り出して逃げていった方を見る。


「あちゃ〜逃したか....まぁ、今後も襲われる可能性が高いから警戒していたほうがいいな」


コバットとピアは宿主の恩から部屋を変えてもらい、今日はそこで休んだ。

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こんな脳筋でも英雄にすることはできるのだろうか @sou_sau_ao1371

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