第4話 馬車の護衛

この何ヶ月か、基本的なことを教え込み、おそらく不祥事は減っただろうというところだった。


「今日は何をするんだ?」

「この街からガーデンの護衛依頼。お前が前に間違えて行ったことあるだろ?そこに行く馬車を護衛する」

「そういえば、久々の依頼だな。なにかあったのか?」

「お前にいろいろ叩き込まないといけなかっったから受けれんかったの」

「っていうことは、俺も賢くなったのか?」

「そんなわけないわ脳筋。そろそろ何かしら受けていないと除名されるかもしれないの」


シュラルトが自制がある程度できるまで、かなりの期間が空いてしまい、その間の任務は何一つとして受けていない。そのため、簡単なものでも受けておかないと冒険者協会から除名される恐れがある。


「っで、あれが任務の護衛する馬車」


門の前に馬車があり、何人か周囲にいた。


「今日はあれを護衛していく。荷馬車の護衛だから荷下ろしも手伝うよ。まぁ、言うて1日で終わるから大したことはない。それに、見覚えのある道だから大丈夫でしょ?」

「それもそうだな」

「あと、私たち以外に2人いるから、くれぐれも失礼がないようにね」


そう言いながら、馬主と請け負う他の2人に挨拶をする。


「君たちが、俺以外にこのクエストを受注した人?」

「そうですね」

「俺はBランクのコバットっていうんだ。よろしくな」

「僕はグラベ・バルツァーと言います。グラベって呼んでください」


コバットは屈強な男、大剣を背負っており、体格では負けているが、顔の傷が多くまさにベテランと言った感じの冒険者だった。

グラウベはコバットより背が小さく、僧侶の格好をしており、片手には白と青に塗装された金属製の杖を持っている。


「Bランクが馬車の護衛依頼を受けるだなんて珍しいですね」


挨拶を交わしたところで馬車に乗り込み、しばらくしてから動きだした。

南の先のデガーンに行くには森を迂回するような道を進む必要があり、時々ではあるがその森から魔物が襲ってくる。

今回の任務はその馬車の護衛である。


「にしても、馬車に乗っている時は暇なもんだ」


街を離れてからしばらくの経ったところだった。

クラベとピアが馬車の後ろ、シュラルト、そしてコバットが先頭に座って警護していた。


「暇なのはいいことだ。魔物が襲ってこないってことなんだが、最近はなんかこの森の様子がおかしくてな」


シュラルトと一緒にいるコバットが話し出だす。


「様子がおかしいってどうゆうことだ?」

「最近、このルートに出てくる魔物の気がたっているみたいでな。そのせいで前よりも攻撃的になっててな、馬車が襲われるっていう事例が増えてるんだ」

「そいつはまたなんでだ?」

「前に林辺りで大きな地震があったからな。そのせいかもしれない」

「それって俺がおこー」


ピアがなにかを察知しかようで、馬車の後ろからあわててシュラルトに向かい、手で口を塞ぐ。


「おこ.....なんだって?」

「いや〜、それが村の近くで起こって、結構な被害がでてさ、アハハハハ....」


なんとか誤魔化そうとする。


「すこし静かに、なにか来ますよ」


森の方の茂みから物音が聞こえる。


「構えろ」


森の茂みの中から出てきたのはゴブリン2匹だった。


「「せい!」」


しかし、さすがBランクといったところか、やり慣れた手であっさりと飛び込んできたゴブリンを倒してしまった。

ピアが構えるまでもなく、ただコバットの方をシュラルトの口を抑えながら見ていた。


「やっぱり、気が立っているね」

「普段、こいつらはあまり襲ってはこないんだがな....」


倒したゴブリン回収しに降り、アイテムボックスに入れて、2人で話していた。


「これは、早急な森の調査が必要だな」


馬車に2人とも乗り込み、また走り出した。


時刻も昼頃になり、馬の休憩という名目で森から少し離れた場所に停車していた。


「この辺にあるかなぁ.....」


コバットが茂みの中で何かを探していた。


「なにを探しているんだ?」

「金の筒....っていった方がいいのか?お前も見たことあるだろ?」

「いや、知らん」


種類にもよるが、片方に内側に穴が空いた円柱の形をしており、こういった休憩場の茂みの中や、ダンジョンでたまに見つけられるもので、冒険者協会に持っていくと、そこそこの価格で買い取ってくれる。


「お、さっそく一個あった」


コバットが発見したのは少し黒ずんだ黄金色の金の筒というものだった。


「ちょっと黒く汚れているが....」

「なぁに、よくあることさ。多分、血が滲んだやつだろう」

「ってことは、この辺りにも沢山ありそうですね」


この石はほとんど場合まとまって落ちており、それをクエスト途中で拾った物を換金するだけで、時にはクエスト以上の報酬を得ることさえある。


「まだ馬の休息には時間がかかりそうだし、もうちょっと探してきてもいいか?」

「森の魔物が気が立っている時だけど....まぁ、兄さんならいっか。ただ、遅れたら置いていきますよ」


コバットが森の奥に行こうとする。


「俺も一緒に行っていいか?」


シュラルトが声をかけた。


「お前、絶対迷子になるだろ」


と、ピアは止めたが、


「いいぜ。一緒に探して山分けだ」


と、コバットはノリノリだった。


「いいんですか?こいつ馬鹿なんでなにかの巣とかつつきそうですけど」

「大丈夫、俺がついていればなんとかなる」

「おう!」


と、そのまま2人は奥に行ってしまった。


「....なにもやらかさないといいけど」

「まぁ、心配なのは分かりますけど、僕たちはBランクなんで、あの人がついていればある程度のことは大丈夫だと思いますよ」


不安が残りながらも、休憩所で馬の回復を待っていた。


「にしても、これ金?にしてはあまり重さはないし、火薬くさいから私は苦手だなんですよね....」

「え?」


クラベが黄金色の筒を鼻に近づけ、匂いを嗅ぐ。


「確かに....少し焼けた火薬の匂いがしますね」


この物からは血のような鉄の匂いとは別に、少しだけだがほのかに焼けたあの独特の刺激臭がした。


「この石って本当になんなんですかね?」

「それは分かりませんけど、冒険者協会が買い取るので間違いなく価値があるものだと思いますよ」


そのまま少し時がすぎ、馬の状態と荷の縛り付けも済ませ、出発の準備が整ったところであった。


「兄さーん!行きますよー!」


森に向かってクラベが呼ぶ。

しかし、そこからしばらく待っても中々帰ってこなかった。


「....またか」


クラべがため息をつく。


「またって?」

「あの人、それを探しに行くとたまに遅れるんです。今度はどこをほっつき回っているんだ....」


と、森の方を見ていると鳥が数え切れないほど飛びった直後、肌にも直接感じるほどの衝撃が森の中から伝わってきた。


「な、なんだ!?」



あまりに強い衝撃だったため、馬車を引いていた馬が逃げ出してしまった。


「あ、まずい!」

「ピアさんはコバットたちの様子を見に行って!僕が馬を引き戻しますから!」


と言い、馬を追いかけていってしまった。


「全く、一体なにがあったんだよ」


ピアは荷馬車から降り、シュラルトが向かっていった方向へ向かっていった。


「おーい!どこにいる!」


森の中を走りながら呼ぶ。


「おーい!あ、いた!」


森を少し進んだあたりでシュラルトがなにかのデカブツを担いでいる横でクラベが話しながら帰ってきていた。


「なにやったお前」

「あ、え〜っと....」

「ハハハ、お前の兄ちゃんなかなかやるじゃないか」


ピアから視線を逸らすシュラルトとは別に、コバットはデカブツを叩きながら笑っていた。


「まさか、Eランクのやつがジャイアントベアーを倒すなんてな。我ながらあっぱれって言ったところか」


ジャイアントベアーは、皮が硬くなかなか刃が通らないことで知られており、また巨体な見た目に似合わない素早やなため仕留めづらく、BもしくはAランクの冒険者が適正と言われているが、


「シュラルトって言ったか?逃げてきている俺に追ってくるこいつに向けて飛び込んで一気にズバッと、いやぁ〜見てて興奮したぜ。どうだ?うちのパーティに来ないか?」

「パーティー?」

「そんなことはどうでもよくて、その肩に背負ってるジャイアントベアー、どうしたんですか?」

「あ、いや〜少しなやつの縄張りに入っちまってな」


話を聞くと、例の石を回収するためにシュラルトがジャイアントベアーの洞窟にうっかり入ってしまい、慌てて逃げ出そうとしたとしたが、シュラルトがすかさず斬りかかったということだった。


「....まったく、お前ってやつは」

「まぁまぁ、そうは言ってもこう無傷なんだし許してやれよ」

「そう言う問題じゃないんです!」

「とりあえず、クラベが心配しているかもしれないから早く戻ろう」


と言われ、3人は馬車に戻った。

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