第2話 ちなみに8センチです。

下ネタ。朕だの満だのアホほどしょうもないはずなのに、子供時代から大人になってもなぜだか笑ってしまう人は多い。

だからこそ、全裸ネタが好きな人がこの世に一定数いるのも理解はできる。

理解は……できるのだが……。

「じゃあ、お前が裸になってみろよアホピンク!!!」

理解したからと言って許されないことも世の中にはあるのだ。

床に向かって放り投げたグラサンがカコンという虚しい音を立てて部室の端へ飛んでいく。

「ぷふっ、全裸の不審者がなんか言ってやんの」

そう言ってタキノコの山を口に放り込んでいた目の前のピンクはゲラゲラと笑う。

笑いすぎて呼吸ができず、息を整えるときに時折プヒュープヒューという声が漏れ出るくらいだ。

「お前……。ぶっ〇してやる!」

我慢の限界だ。激高し首を絞めにゆっくりと詰め寄る。

「イヤー(笑)、助けてー(笑)、襲われるー(笑)」

笑いながらあからさまに棒読みな演技をする。

くそ、こっちは本気だぞ。

「ねぇ、ねぇ。どうやって殺すのかな(笑)」

「ん?そりゃ、絞め殺し……」

その刹那、気づく。

「あ」

声が漏れ出る。

すると彼女は何かを期待しているような笑みを浮かべながら問いかける。

「どうやって、両手、使うのかなぁ(笑笑笑)」

「てめぇぇぇ!」

策士だ。手を離せばアレが見える。しかし、手がふさがっていれば絞め殺すことはできない。

「じゃあ、殴り殺し……」

「殴られてる間に大声出すけど?」

くそっ、そうだった。この状況、バレてみれば完全に被害者はこの忌まわしいピンク。

どうする。どうする、どうする。いったいどうすれば……。

「はぁい、後輩君の負けぇ。私に頭脳戦で勝てるわけないじゃん。ざぁこ、ざぁこ。後輩君のざぁこ」

クソ、クソ……。

「おーい。ザコの後輩。だっさいグラサンかけて全裸で廊下を全力疾走した変態(笑)」

だれの……せいだと。

いいさ。たとえなんと言われようがやってやる……。

「やーい、へんたいっ、へんたいっ……」

「おい」

「え、なに(笑)雑魚の後輩君……」

少しクソピンクの顔色が変わる。

「いやいや、ちょっとした冗談……」

「言い訳無用。わからせてやらぁ!このメスガキもどきがぁ!」

両手を股間から離し、エリマキトカゲが走るように彼女の首に向けて手を伸ばす……。

「ちっちゃ!隠す必要ないじゃん!!!」

たった、一言。

彼女には馬鹿にする意図はなかったのだろう。おそらく心から出た本音なのであろう。

彼女の方も「あ」という言葉が漏れ出ている。

それこそに俺をノックアウトするには充分であった。

目の前がブラックアウトする。結局、俺は彼女に何一つできなかった。

いや、やっぱり一つだけできたことがあったらしい。

後日、他の部員に聞いた話だが

『なぜか、この日以来彼女はタキノコの山を食べるとき、ほんの少しだけためらうようになったそうだ』










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いったい、どんなタイトルにしたら売れると思いますか!? 寺条 好 @kyuusyuudanji

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