夜想曲
藤和羽流
第1話 夜を想う
私は一人、夜を歩く。
夜は好きだ。昼はがやがやしているが、夜は静か。この静けさが私のお気に入り。
深夜徘徊では? と思う輩もいるだろうが、気にしない。私はもう高校三年生の年齢だし、ほぼ大人でしょ。
「さて、今日は何しようかなー」と、一人ぼやきながら歩いた。夜の住宅街は所々にある街灯が唯一の光で、虫がその光を求めて飛びまわっている。
「あれ、私みたいだなー。希望を求めてるみたい。まぁ、私には希望なんてないけど」
またぼやきながら歩いていると、何かを蹴ってしまった。
「ん? なんだ?」
蹴ったものを見ると、それはランドセルだった。まだ新しいので、一年生だと思う。
「なんだ、ランドセルか。何か入ってるかな」
ロックも外れていたので、足で雑に開けると、手が転がり出てきた。小さいので、子供の手だとおもう。このランドセルの子かな。
「うわぁ……、ばっちぃなぁ……、無視無視」
善良な市民なら通報するところだが、私はしない。だって、パトカーとか救急車のサイレンはうるさいじゃん。けたたましい音は、夜にいらない。
「ふふっ、私、夜を守っちゃったわ。ヒーローじゃーん」
まぁ、自慢できる友達なんていないけど。生まれた時から一人だし。
「誰でもいいから私を拾ってくれんかなー」
私は一人、夜を歩く。
夜想曲 藤和羽流 @syousetubaisuki
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