第2話
とある民家の一室で、ひとりの女が目を覚ます。
時刻は既に13:00。寝坊ではなく、この時間帯に目覚めるのが彼女のライフサイクルであった。
その不規則な生活による弊害で髪は痛み、肌は荒れ、元来の美しさを損ねていた。
彼女の名前は
齢は20歳の大学生。ただその大学も諸事情で休学しており、現在はこうして部屋に引きこもっている。
外は晴れ、太陽が
閉め切られたカーテンにより日光は差し込まず、室内に設置された照明もどれひとつ灯っていなかった。
唯一の光源は、スマートフォンのブルーライトのみ。そのぼんやりとした光だけが、
「……何か笑えるものないかな」
お笑い芸人の動画、SNSで反響のあった面白い投稿を見て、気晴らしするのが向日葵の日課だった。
笑っている間だけは、心に押し寄せる憂鬱や過去のトラウマを遠ざける事ができるからだ。彼女にとって笑いとは、一種の精神薬であった。
「あはは……」
その薬ですら、彼女にもたらすのは乾いた笑いのみ。心から笑った記憶など、今は遠い過去のものである。
それでも彼女にとって、笑いが救いである事には変わりない。動画の再生を終え、次なる笑いを求めてSNSを閲覧し始めた。そんな時だった。
#全裸男
「全裸男……?」
全裸男。その単語のインパクトの強さは向日葵の興味を引くには充分だった。
「ぷっ、何これ?」
あまりのくだらなさに、思わず吹き出す。
全裸男とは何なのか?
小説や映画、もしくは漫画のタイトルだろうかと思考は巡る。
しかし調べるうちに、全裸男とは架空の作品やキャラクターではなく、大都会を裸で疾走するひとりの男の事だと判明した。
全裸男が実在する事に衝撃を受ける向日葵。次いで彼女は更なる衝撃を受ける。
その原因は、トレンド入りしたもうひとつのハッシュタグだった。
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天照 @Dokkn11
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