元カノに振られ、卒業式だけ学校にいく。

 「ネオー、起きてー、昨日、卒業式くらい学校行くぜ!みたいな事言ってたじゃない!」

 うるさいなぁ、やっぱ、いざ当日になると、行く気無くなったんだよ。

 あとちょっとすればあきらめ.....


 ドタドタドタ


 やばっ、この足音は未来だな、また腹乗られたら、今度こそ出ちゃう。


 未来は僕の妹で、未来には、双子の妹の真響がいる。

 未来は足音の通り、常に元気で明るく、見てるだけで笑顔になれるような子だ。それに反して、真響は、結構静かめな方で、挨拶以外はこっちから話しかけないと口を開かない、学校でもあまり友達と喋っている所を見たことがない。だからと言って会話が苦手と言う訳ではないらしい。  


 僕は、ベッドから飛び降りる。

 この部屋は、ドアを開けると、目の前にベッドがあるから未来は、いつもドアを開けた勢いのまま、俺の腹に乗ってくる。

 母さんは、それを知ってか、知らずか、今すぐ起こしたいときに、みくるを使ってくる。


 バンッ


 「ネオにぃ起きろー!」

 未来は、予想通りに、ドアを開けた勢いのまま部屋に入ってきた。

 ?何かこっち来てないか?

 僕は今更ながらに、ドアとベッドの直線上にいることに気づいた。

 結果は言うまでもない、そのままの勢いで、僕を巻き込んで、ベッドに倒れて、結局お腹に乗られた。


 「へぶぅ!?.......」



 「おはー」

 「ネオ、おはー」

 「ネオにぃ、おはー」

 さすが僕、出さなかったことを褒めて欲しい。

 僕はあのあと、軽く未来にデコピンして、着替えたあとリビングに降りた。

 あと、無駄だと思うが、起こし方を変えてくれと頼んだ。

 リビングのテーブルには、既に、母さんが焼いたパンや、他のおかずが、並べられていた。

 真響は、もうすでに食べ始めている。

 うちは朝、パン派で、マーガリンを塗った食パンに、好きな物を塗ったり、載せたり、挟んだりして食べる。

 今日は、僕はマーガリンそのままで、未来は目玉焼きを載せていた。

 「それ旨そう、明日僕も目玉焼き載せようかな」

 「じゃあ、私明日もこれにするからレオにぃの分もつくろうか?」

 「うん、お願いするよ。出来たら下にベーコンも敷いてくれる?」

 「おー、私も明日は、それにしようかな?」

 「オッケー、ネオにぃと母さんも入れて、3人分ね」

 この家には、母さん、僕、未来、真響の3人で生活している。

 父さんは、仕事の都合で家に帰れないらしい。

 なので、僕も、未来も、真響も、父さんには、会うどころか顔や声も知らない。

 そのあと、いつも通りの何てことのない会話を交わし、食べ終わった僕は、歯磨きを済ませ、未来と一緒に玄関に出る。

 「こうやって二人で登校なんて久し振り....ネオにぃ?学校は、そっちじゃないよ?」

 玄関のドアに手をかけた反対の手を掴まれる。

 「ちょっと日差しに当たって気持ち悪く...」

 「太陽出てないよ」

 「コンタクト忘れ....」

 「視力私よりいいよね」

 「....

 「エクスプロージョン!って、寝てるとき叫んでたよ」

 「まだ何も言ってないのに黒歴史つくらないで.....」

 「......」

 「......」

 「......」

 「ほら行くよ!」

 僕は、襟を掴まれて引きずられた。

 ちなみに真響は、とっくに出ている。



 .....十分後。


 「そろそろ踵が熱くなってきたので離してくれませんか?」

 「あー、ごめんごめん」

 僕の結構高かった靴が....。

 踵の部分が斜めに、違和感無く削れた。

 歩きにくいが....。

 この学校は、校門に入っても生徒玄関までまぁまぁな距離がある。そしてそこには、今の時間たくさんの人が集まる。なので、今の僕も含めて、あまり他の人に会いたくない人は、裏に回るのだが......。

 「久し振りで忘れていた!」

 「なに、ネオにぃ?忘れ物?」

 「いや、違う。そもそも、僕は置き勉だから、忘れる事はない」

 「家で勉強しようよ.....」

 「やだ」


 「あの、蛍原さんの隣にいるの誰?」


 ほら来た....。


 木の影の女子たちの声。


 「お兄さんだよ、あの不登校の」


 何だよ、あの不登校のって、ひそひそ話すのなら、聞こえないように話してくれないかな。


 「あぁ、昼間からゲーセンとかで遊んでる、遊ぶために不登校になった人か」


 「何であんなクソ不登校野郎が、未来ちゃんと兄貴ってだけで仲良く登校してんだよ!?」


 今度はさっきの女子とは、反対側の木の影で男子が騒いでる。


 「兄貴ってだけで十分な理由だろ」

 「俺も未来ちゃんの隣で登校してー!」

 「俺もおにぃちゃんって呼んでー!」

 「ハァハァ....」


 ........。

 五人目の奴は、未来に近づけないようにした方がいいな。

 .....いや、二人目以外同じようなもんか。


 「何も知らない人の言うことをいちいち気にしてたらきりがないよ」


 「へ?」


 さっきとは、少し声の感じが違うが、未来の声か?


 「ネオにぃの事は、私たち家族が知ってるから、今みたいな声に弱ったら、いつでも家に帰ってくればいい、そしたら私が慰めあげる」

 そう言って笑った。


 ......。


 なにそれカッコいい。 


 「それにネオにぃを知ってる人達ならきっと、ネオにぃの事を理解してくれてるはずだよ。味方は、家族だけじゃないの」


 「そっか」



 味方は、家族だけじゃない。

 大丈夫、クラスの皆なら.....。

 皆なら.....。

 皆..なら...。

 う、うぅ。

 僕は、教室の扉の前で動けずにいた。

 未来は、ああ言ってくれたが、やっぱりどういう反応をされるか怖い。

 僕が扉の前でもじもじしていると、反対の扉が開いて....


 「やっぱりネオじゃねぇか!久し振り!」


 そこには、懐かしい声と、顔があった。


 「玲生!それに響も!」


 赤江玲生が両手を広げてこっちに駆けてくる、僕も同じ様に駆けていき....

 「ネオにぃ弁当渡すの忘れてた~」

 「あ、ありがとー」

 あとちょっとの所で僕が止まって返事をする。

 「何か忘れてるなと思ったらそれか~」

 「忘れてるのは、それだけじゃないよ...」

 「響もハグする?」

 「いいよ、それより"も"じゃないでしょ、玲生忘れてる」

 と、椪田響が玲生を差す。


 「あ...」


 仲良く空気とハグしてる.....。

 「玲生~」

 「ネオ~」

 さっきのやり直し。

 また体でかくなったか?いや、なんかがっしりした?何ヵ月も会わないと変わるもんだな。

 「祢援...久し振り.....」

 「あぁ、響も...」

 「よっし、ネオも教室の中入れよ暖かいぜ」

 「でも....」

 「皆お前の事情を理解してる、今更悪く言う奴何ていない」

 !?

 「響には、何でも見透かされてる気がする」

 「そんなことないさ、お前がわかりやすいだけ」

 「へっ、」

 僕は教室の扉に手を掛ける

 一度深呼吸。

 開け...る前に軽く二人の紹....。


 ガラッ


 「えっ....」

 「おーい、こいつ卒業式だけちゃんと来やがったぜー!」

 開けやがった......。

 全員の視線が一ヶ所に集まる。当然そこは、僕。

 自然と僕の喉が音を鳴らす。


 「お、おはー..........」

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元カノに振られ、元カノに告られる。 紅荒力 @-kira

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