練習試合

「よろしく」

 そう爽やかに言って、対戦相手の子はグローブタッチを求めてきた。

「お手柔らかに」

 そう言って、私はそれに応じた。


バギイッ!


 彼女のグローブが再び私に触れたのはそれから間もなく、強烈なフックとしてだった。

 ヘッドギア越しでもその威力は凄まじく、私はマウスピースを吹っ飛ばされ、そのまま横倒しに倒れた。

 必死で立とうとした。でも、全く立てなかった。

 テンカウントを聞いた時、私が立ち上がるのをファイティングポーズで待っていた対戦相手の子は「せっかくの練習試合なのに何の練習にもならなかった」というがっかりした顔をしていた。

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女子ボクシングショートショート s-jhon @s-jhon

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