エピローグ

 ――未明、よく宝物に辿り着きましたね。

 天使は神の光の御元に返り、跪いて礼を示していた。

「しかし宝物は使われてしまいました。わたくしが気付くのが遅かったばかりに」

 内心なんとも思っていなかった。宝物は一つ使われてしまったが、町も一つ世界から消え去った。支えるための世界が少し減ったのだから、宝物が一つ消えてもどうということはなかった。

 ――いいのです。世界の均衡は保たれました。あなたは場所を特定するだけで良かったのだから。

 ふわりと優しい風が天使の頭を撫でた。天使はそれに気を和ませることなく、ただかしずいていた。

 ――ありがとう、私の子。今後東雲のようなことを起こさないよう、よく注意しておいてください。

「心得ました」

 光は消え去り、天使は力を抜いてあぐらをかく。

「……明日は我が身だな」

 光にやかれ白く塗りつぶされた世界の果てを眺めながら、天使は微笑んだ。

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ユーアーピグマリオン 士十一 @XI_11

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