第20話 結婚3年目② 3度めの自殺未遂

そして、やってきた私の誕生日。

「わたしの子ども時代」にも書いた通り、私は望まれない子どもだったし、母にも嫌というほどそれを言われて育った。


だから私は、年に1度の、自分の誕生日が1年で一番嫌いだ。

そんな誕生日が、ガチ鬱に転じている最中にやってくる。

12月も半ばに入った頃。私の誕生日の日。

しんと寒い日だった。


ガチ鬱の中、身体は動く。

私は、当時離婚のことばかりを考えて、いろんなところに電話しまくったり、離婚調停の書類を取り寄せたりしていた。そして、マンスリーマンションを探したりしていた。

このあたりは、ある意味では躁状態に近い。


当時の私は、おそらく混合状態(心はガチ鬱、でも身体は動く)だったのだろうと思う。


この日も、離婚やマンスリーマンションの契約に向けて出かけていた。

ガチ鬱になり、何もかもが嫌になり、離婚して自由になろうとでも思っていたのかもしれない。


帰りがけ。フラリとお酒を買った。

普段は滅多にお酒は飲まない。

体質的に弱いからだ。


お酒のことはよくわからない。

とりあえず、度数が高めで飲みやすそうなものをチョイス。


そして、私はマンションの屋上に行った。

屋上で、手すりに上り、ぷらーんと足を投げ出して、酒を煽る。


好きな曲を聞きながら、今までの人生を思い返した。

何か、いいことあったかなぁ。

小さい頃から、疎まれてばかりで、誰の役にも立てなかったなぁ。

彼にも迷惑かけてばかりだったなぁ。

とにかく、ネガティブなことばかりが浮かぶ。


酒を飲みながら、その場で遺書を書いた。

酔いが回ってしまう前に。


「母へ」「旦那へ」「自分へ」

三部作だ。


途中で、涙でもはや何を書いているかもわからなくなった。お酒も回ってきた。


帰りが遅いことで、彼からLINEが来ていた。

私は、自分の最期に、屋上からのきれいな夜景を送信した。

心のどこかで、もしかしたら止めて欲しい気持ちもあったかもしれない。

自分の最期を、知ってほしかった。


酔いも回って、遺書も書き終えた。

そろそろ楽になろう。


あっちの世界では、私を可愛がってくれた祖父が待っている。祖父に会いに行こう。


いそいそと荷物をまとめる。

手すりの上に立つ。

まるで、タイタニックのように、両手を広げる。


さよなら、世界。


飛び降りよう、とした時、「ふゆさん!」と声がした。

彼だった。一目散にかけよってくる。


動揺してフラついた拍子に、屋上から落ちそうになったところを間一髪、助けられた。


心配した義母も家に来た。

自分の思いを伝えた。


離婚したら、実家とは縁を切って知らない土地で暮らそうと思っていること。

また独りぼっちになってしまうのがつらかった。

こんな自分に嫌気が差した。


等々。


ひと通り落ち着いたところで、義母は帰っていった。

帰る直前に、私のもとに来て、ハグをした。

「私はあなたが大好きよ」と言って、去っていった。


私は、実の母親にすら、ハグなどされたことはなかった。

動揺した。

と同時に、凍った心が少し解け始めた。


彼の提案もあり、近日中にかかりつけの心療内科を受診して、事の経緯を説明した。


夏に週7で稼働してたのに、だんだん難しくなって、そんな自分に嫌気が差して冬頃には飛び降り未遂をしたこと。


医者は言った。

「うつ病じゃなくて、双極性障害の可能性がある」


「薬を変えてみましょう、炭酸リチウムという薬を出します。これで様子を見てみましょう」


私は、双極性障害なんて特別な人がかかるものというか、イメージ的にはブワーッと多弁になったと思えば急に黙り込む、みたいなタイプの人を想像していた。


だから、「双極性障害の可能性がある」と言われて、懐疑的でもあった。


しかし、とりあえず出された炭酸リチウムを飲んでみることにした。


さて、どうなることやら。








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