第12話 「うつ病」の診断、挫折、引っ越し

2度目の自殺未遂をしたにも関わらず、私は「まぁこんなこともあるさ」と痛む手首と、神経を損傷して感覚麻痺を起こした手の甲を撫でながら思った。



普通に考えたら、まぁそんなことはないのだ。

なぜ気付かぬのだ。と言いたくなるが、当時はそう思っていた。


そして、何とかかんとか無事進級して、実習もレポートも卒論も就活もこなし、大学4年間を表向きは無事に過ごした。国家試験も何とか通り、無事に4年間の集大成である「看護師」と「保健師」の免許を得ることができた。

今思えば奇跡的だ。


私は、看護師として大きな病院で働くことになった。

かつて、1度目の自殺未遂で運ばれた、救急救命センターのある病院だ。


そこに就職すれば、人生安泰、とは言い過ぎかもしれないが、もう先々にレールは敷いてあって、あとはそこを進めばいい。絶対安泰であろう職場だった。


しかし、就職して半年で異変が起きた。

朝、起きられなくなった。

仕事に行かねばと思えば思うほど、身体が言うことを聞いてくれない。

どうしようもなくなって休めば罪悪感が襲ってくる。

そんな日々の繰り返しで、ついに私は休職を余儀なくされた。

その時に付いた診断は「うつ病」だった。

抗うつ薬、睡眠薬が処方される。


3ヶ月、休職をした。さすがに身も心も休まった。

が、戻れる場所があるかと言ったら、なかった。

戻る場所がないわけじゃない。

でも、腫れ物に触るような、というのだろうか。

そんな扱いが、どうにもつらくて、そのうちにその職場とはおさらばしてしまった。


看護師1年目、就職して半年でガタが来て、9ヶ月で転職することになった。

社会人になって初めて味わった、初めての挫折。


転職を決意して、遠くに引っ越した。

いつかの大好きだった彼とよく行った街に。

どこか知らない土地に引っ越そうか、なんて思ったら、ふとその街が浮かんだ。


思い出以外、何の縁もない街に、たった1人引っ越した。

辛いこと、悲しいことは置いて。

楽しいことだけ見て生きていけばいい、と思って思い出のある街に引っ越した。


とか言って、ある意味ではこの転職は「序章」に過ぎなかった。

そして、楽しいことだけ見て生きていくなんて、不可能なのだよ、キミ。

当時の若かりし自分に言ってやりたい。


そんなこんなで、第二の私、始めました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る