第11話 無敵の躁モード、そして2度目の自殺未遂

経済的な理由から通院を頓挫して数ヶ月。

特段、変わりなく過ごしている。


変わりがあるとしたら、バイトを掛け持ちするようになった。

朝から夕方まで、フルコマで大学で授業を受けて、その後はスーパーで22時までバイト。

さらにはいわゆる「夜の世界」で朝方までバイト。


ロクに寝もせずに、髪も盛り盛りになったまま、また授業に出る。

周りからすれば、「アイツ、どうした?」ってなるだろう。


ただ、私としては「頑張ってる私」がどこか誇らしいとすら感じていた。


そして、私はいわゆる「出会い系サイト」で知り合ったおじさんと対価ありの関係を持つようにもなっていた。

今で言うところの、パパ活とでも言うのだろうか。


今なら、客観的に自分を見れば完全に躁モードになっていると思う。

双極性障害における躁状態の特徴は、「ロクに寝なくても平気」「疲れ知らず」「性的逸脱(いろんな人と関係を持ってしまう)」等々がある。


この時の私は、まさにこれだろう。


バイトも掛け持ち、そしておじさんからもお金をもらい、金銭的には潤っていた。


そんな状態が数ヶ月ほど続き、パタリと起き上がれなくなった。

無敵の躁モードの終焉だ。


さて、どうなったかというと。

何もかも億劫。何もしたくない。対価を得て関係を持つことに対して、自己嫌悪の感情を抱く。等々だろうか。


授業は、ただでさえ留年候補生だったので、鉛のような身体を引きずってかろうじて出席していた。

でも、ただ「出るだけ」。身になっていない。


バイトは、生活費もあるので、鬱々としながらも何とか頑張った。でも、月に数回は休んでしまった。



そんなこんなで、鬱々とした日々が続き、ある時私は当時の彼氏とケンカをしてしまった。

ケンカをすれば売り言葉に買い言葉、汚い言葉も飛び交う。


そんな中、ガチ鬱モードの私はまたやらかしてしまう。20歳の夏くらいだっただろうか。


また手首を思いきり切ってしまったのだ。

何故そんなことをしたのか?記憶にない。


また、血が噴き出して、海になる。

また救急外来行きだ。


傷は深く、神経も傷付いていた。

2回目の自殺未遂のせいで、私の腕には後遺症が残ってしまった。指の感覚がいまひとつ、といったところか。日常生活には問題ない程度だけど、寒くなったり暑くなると、芳しくない。その程度。


この時は、本当に意味がわからないが、「頭上の棚から包丁が落ちてきた」と言い張った。

そんなことあるわけないだろー!と自分でもツッコミ満載だ。


そんなことがありつつも、やはり精神科に通院することはなかった。

金銭的な負担もキツいと思ったし、何よりも「精神科に通院している自分」が嫌だった。


「一時の気の迷い」ではないが、その程度、気が高ぶればそれくらいするだろう、次は気を付けよう、程度で自己完結してしまった。


今思えば、気が高ぶる度にそんなことやってたら命が持たんよ、キミ…とツッコミを入れたくなる。


しかし、人生とはタラレバだ。

あの時こうしていたら、あれをしていれば、は人生においては無駄なのだ。


今だからそう思えるだけで、当時の私は気付いていなかった。


2度目の自殺未遂からしばらく経ち、気分もだんだんと落ち着き、またフラットな状態になる。


あぁ、また本来の私に戻った。

そんな気持ちでいた。


本当は、そんなことないのにね。

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