第10話『魔物の脅威』

ヨザーヌが単独で西門へ走っていったのとは別の場所に向かうゆり達。3人は何やら嫌な予感がしていた。


『ったく、ヨザーヌの奴勝手に行きやがって!こっちの身にもなれってんだ。』


『まぁ、まぁ、ヤミルさん。ヨザーヌさんなら大丈夫ですよ。凄く強いですし!。』


少々イラついてるヤミルを落ち着いて貰おうと声を掛けるルザス。


『けど、....ヨザーヌさんの所、嫌な予感がする....。こっちの...方向も。』


『ッッ...。(絶対死ぬんじゃないよ。ヨザーヌ。アンタはこの街の英雄なんだから)ルザス!ゆりちゃん!すまないけどヨザーヌの元へ向かうわ。』


時は戻り、現在。ヨザーヌが背中を刺されて負傷を負いながら敵の分身と対峙していた。


『はぁ...はぁ...っくそ!本体を叩かないとジリ貧だぞ!しかし分身の癖に強いぞこいつは!!!』


片手で傷跡を抑えながら剣を構えるヨザーヌ。

敵のリーダーは、分身を何処からか出してヨザーヌの元へ来ている。そんな時、敵の分身が喋り出す。


『しぶとい人間だ。だが、いつまで持ち堪えられるのか見ものだな。』


そう言うと、敵の分身体が武器を構えてゾロゾロとヨザーヌに近づいて来る。


『ックソ!『重力領域』!。』


範囲内にいる敵を重力で押さえつけ、全員斬っていくヨザーヌ。息を切らしながら立っている。


『はぁ、はぁ、はぁ....っ!っ!。』


『...やはり、元副騎士団長はこの程度では殺せないか。だが、お前のその力は体力を消費するんじゃないか?どんどん息切れが激しくなってきている...。死ぬぞ?』


またしても、分身体が先ほどの倍の数でヨザーヌの前へ現れた。剣や弓矢を持つ分身もいた。


『へっ、死ぬのは怖いが、俺には頼れる仲間がいるんだ!最後まで足掻いてやるよ。』


喋る分身体に剣を向けて言うヨザーヌ。その時、無数の大きな包丁が分身体を全員刺した。


『はぁ、全く...一人で突っ込んでこのざまかい。ヨザーヌ、アンタは昔からその癖直せっていつも釘を刺して言っただろ!私ゃ心配したんだからね!』


手に腰をやって、ヨザーヌの方を見ながら説教をするヤミル。すると、敵の分身体が武器を振りかざして斬りつけようとする。


『何人増えようと同じだ。』


『アビリティ『家事』サメ斬り包丁。』


ヤミルがそう言った瞬間、手から大きなサメ斬り包丁を出し、敵を鋭く斬りつけた。


『ほう...、それがお前の力か。』


他の分身体が距離を少しとって言う。ヤミルは何かに気付く。


『分身体が何故わざわざ距離をおくのさね。もしかして、本体はお前さんかい?まぁ、そう油断させて攻撃してくるっていう作戦かもしれないしねぇ。』


そう言いながら、敵の分身に近づくヤミル。分身体は距離を少しずつとりながら後ろに下がる。


一方で、ゆりとルザスは...


『...ヤミルさんが、敵と戦ってる。』


魔力を感知して、ルザスに伝えるゆり。ルザスはハァっとため息を吐く。


『ヤミルさんは、いつもこうなんだから!。けど、こっちの方向も敵の魔力を感じるからヨザーヌさん達の所は囮かもしれない。ゆりさん、気を付けていこう。』


『....うん。』


そうして2人は、敵の魔力を感じる東門の方へと向かった。着くとそこは、どす黒い魔力で溢れていた。


『ここが東門、西門よりも魔物の発生率は低い筈です。ですがこんなに大きい魔力を持つ魔物は初めてです....。』


少し、唾を飲み込んで汗が少し出ながら歩き出すルザス。その時、目の前にある森の木の影から何かが反射して見えた。それに気付いたゆりはルザスを守ろうとアビリティを使う。


『ッッ!!ルザス...危ない『血鎌』!』


ゆりの掌から魔血を出し、大きな鎌を形作ってとんで来た物を防御した。防御したものをよく見ると、先端に毒が塗ってある矢だった。


『.....そこに隠れてる奴、出て来い...。』


ゆりが血鎌を一本の木に向けて言う。すると黒い角を生やした魔人が出てきた。その魔人は、紫色の瞳に、眼鏡を掛けており、執事の様な服装をしていた。


『....まさか、こんな子供に防御されるとは。私が生成した毒は、大抵の武器は溶かせるのですが...。やはり、本来の力で殺さないと駄目かもしれないですね...。』


自身に呆れてる顔をしながら言う魔人。眼鏡をクイっと上げた後、腰に付けていた剣をぬいた。その時、目視できない素早いスピードで背後に回り込んだ。


『まずは貴方から始末しましょう。』


そう言いながら、ルザスに向けて剣を振り回す魔人。ルザスは咄嗟に回避する。


『『伸縮自在』!....はぁはぁ、うっ!』


『..!!!ルザスっ.....!!!』


伸縮自在で魔人との距離を伸ばして逃げるルザス。しかしすぐに回避出来なかった為、少し肩に攻撃を喰らってしまった。斬られた場所からどくどくと血が流れていた。


『ほう...今のを避けますか。中々にできますね。』


剣に付いた血を振り払いながら言う魔人。その時、ゆりが魔人に向かって走り出す。


『アビリティ『魔血』...『血鎌』ッッ絶対に許さない.....』


死んだ瞳の眼をしながら、血鎌を持って魔人を

斬りつけようとするゆり。その時、魔人が剣を上げてぶんっと一振りした瞬間、ゆりは斬られて後ろに少し飛ばされた。


『!?ゆりさんっ!『伸縮自在』!』


『ッッッ........攻撃が、見えなかった...。けどこの斬り傷....これがさっき言ってた、お前の本来の力(アビリティ)でしょ...?』


大きい斬り傷から大量の血を流すゆり。攻撃を喰らったおかげで、少し冷静になった。地面に膝をつきながら魔人に向けて言う。それを聞いた魔人は驚いた顔をしながら笑っていた。


『ハハハハッ!観察力の鋭いお嬢さんだ。そう。ご察しの通り、私のアビリティは斬撃を見えない速度で放つ、『斬撃』です。


魔人は少しニヤッとした表情を浮かべる。

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Dread Vampire〜戦慄の吸血鬼〜 sira @SRKN

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