第9話『異変〜disaster(後編)』
『こ、これは...!』
驚く様子を見せるネルフィス。ヤミルとヨザーヌが、気になって声を掛ける。
『ネルフィス?どうしたんだ?』
『ゆりちゃんに何かあるのかい?』
知らない2人はネルフィスに聞く。ネルフィスは、少し険(けわ)しい表情で2人に伝える。
『先輩...落ち着いて聞いてくださいね。ゆりさんなんですが...その...えっと...。』
言うのに躊躇うネルフィス。困っている時に、ゆりがネルフィスの服を軽く引っ張る。
『ゆ、ゆりさん?』
『ネルフィス...さん、言って下さい...。私は、大丈夫です...から。それに、いつかバレる事も....覚悟してましたから.....。』
少し申し訳ない顔で言うゆり。ネルフィスは、躊躇う事をやめて真実を話した。
『彼女は...ゆりさんは人間ではありません。ゆりさんは、『吸血鬼』なんです。それも.....特異体質で、日光の下でも夜の様に自由に出歩けるんです。そして食事も本来は人間の血を吸って生活しないといけませんが、彼女は人間の血がいらない代わりに魔物の血を吸って生活しないとダメなんです。』
今分かっていることを、2人に教えるネルフィス。ヤミルとヨザーヌは少し驚いた。
『そうだったのかい。まさかゆりちゃんがね...何だか人とは違う感じがしていたんだけど、まさか見事に当てるとは思わないさね。』
『実は俺もなんだ。ゆりの登録をした時に、紙が赤黒くなっていたんだ。何となく予想はしていたんだが...まさか吸血鬼だったとはな。驚いたよ。』
軽く笑いながら頭を掻く2人。
『...怖がったり、しないんですか....?』
少しモジモジしながら2人に聞くゆり。ヤミルとヨザーヌは互いに顔を見たあと、ゆりにこう言う。
『ゆり。俺達はこれまでの人生で何度も何度も恐ろしい体験をして来たんだ。だから、ゆりが吸血鬼だったとしても俺達は絶対怖がる事はそうそうないから安心してくれ。』
『まぁ、私達が感じた恐怖を上回ってたら話は別さね。どれだけ経験しても怖いものは怖いんだからね...。』
ヨザーヌがゆりの頭を軽く撫でた。ゆりはポロポロと涙を流す。
『....ッッ!良かったです....。ずっと気にしていたから....少しでも、仲良くなりたい一心で、
皆さんと一緒に...行動をしてたので。』
グイッと涙を拭いながら言うゆり。するとルザスが、ヨザーヌとヤミルに頭を下げた。
『ヨザーヌさん、ヤミルさん、今までゆりさんの事を黙っていてすいませんでした。言ったら大事になると思い話していなかったんです。然るべき罰は受けるつもりです。』
誠心誠意で頭を下げて謝罪するルザス。ヨザーヌとヤミルはそれを聞いて、少し笑っていた。
『ははは、そうだったのか。』
『ルザス、アンタが他人思いなのは今も相変わらずさね...。そういう所は嫌いじゃないよ!でもね、ルザス。私とは長い付き合いさね。もっと頼ってもいいんだからね。困った時はお互い様だろ?それに、私達はどこかの王族・貴族みたいに大事にする様な奴じゃないさね。けど、罰を受ける覚悟があるなら私から言えるのは一つさね。』
腰に手をあてて、ルザスに自分の思っている事を伝えた。そのあとルザスの頭に手を乗せて言う。
『『しっかりゆりちゃんを守ること』。絶対に何がなんでも....ゆりちゃんを守ってあげなさい。私から言えるのはこれだけさね。』
ルザスの頭を撫でながら優しく伝えたヤミル。ルザスは頭を上げ、宣言する。
『ゆりさんを、命に変えてでも守り抜きます。何があっても!絶対に....。』
ビシッと立って、堂々と宣言するルザス。隣にいたゆりは少し笑顔になっていた。
『それでいいさね!さぁ食べるよ!』
『食事は既にご用意していますのでこちらへどうぞ〜。』
ヤミルとネルフィスの言葉を聞いてゆり達も席に座る。その時、ゆりが何かに気付いた。
『...!何だか、嫌な予感がする....。』
『全員...皆殺しだ!』
ゆりがそう言った瞬間、何者かの大声と共に、街の門で爆発が起きた。
『!い、一体何が起きてるんですか?!アビリティ『魔法書』、『広範囲探知』...!これは!』
アビリティで広範囲に探知をするネルフィス。すると、ネルフィスが険しい顔をする。
『ネルフィス!何があった!』
ネルフィスに状況を聞くヨザーヌ。ネルフィスは焦った顔で伝える。
『今!西門から大群の魔物の群れが襲って来ています!数はおよそ数千体います!』
『何だって!?すぐに向かうぞ!』
そう言うと、全員は西門へ走っていった。一方、西門は.....
『く、....くそ.......きゅ、急に魔物の大群が襲ってきやがった...。体力が持つまで食い止めるしかねぇぞこりゃ!....ッッ!』
西門を襲ってきた魔物を食い止める為、武器を持って戦う兵士。しかし、素早く背後に回り込んで兵士を刺す魔物にやられた。その魔物は、大群の魔物に指示を出す。
『さぁ、お前達!1匹残らず蹂躙して来い!この街を破壊し尽くす!』
そう言って行こうとした瞬間、指示した魔物に向かって一本の剣が速いスピードで飛んできた。しかし、剣で弾かれるがヨザーヌがキャッチする。
『貴様...何者だ!』
剣を向けて、聞く魔物。ヨザーヌは、その時、アビリティを発動させる。
『...アビリティ『重力』(グラビティ)。『重力領域』(グラビティエリア)。』
そう言った瞬間、魔物達の周りに重力が重くなる領域を出し、地に押し付ける。
『俺はヨザーヌ・ローバロ。これでも元、副騎士団長だよ。』
そう言いながら、ゆっくり歩いて近づき、剣を向けて尋問する。
『このタナンヤの街に何しに襲ってきた!お前らの目的は何だ!』
大きな声で聞くヨザーヌ。剣を向けられている敵のリーダーは、重力に押し付けられているのに笑いながら答える。
『フフフ、ハハハハ!何しにきただって?俺達はなぁ!魔王様からの命令でこの街を襲って来いと命じられたのさ!火の海にして全ての人間を皆殺しにする為さ!』
凶悪な顔つきで、理由を説明する敵。ヨザーヌはとどめをさそうと剣を振り上げる。
『...そんなことにはさせやしない。この街は何がなんでも守り抜くさ。さらばだ。』
ヨザーヌは素早く剣を振り下ろす。しかし、首を斬り落とした敵がドロドロの液体になってしまった。ヨザーヌは驚く。
『何...?!偽物!じゃあ本体は一体...ッッ!!!』
立ち止まるヨザーヌの後ろから、さっき斬った敵が鋭い剣で背中を刺された。ヨザーヌは血を吐く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます