最終話 ネゴシエータよ永遠なれ


 一か月後。中層に入った僕達はオーガとドリアードの二種族の承認を得ていたことが大きかったのか、その他の種族の交渉はスムーズに進み、中層全体のモンスターとの交渉は終了した。


「中層までの交渉は終了しました」

「後は下層と深層か。先は長いね」

「はい。でも下層の方は無理しなくてもいいかと思います」

「そうだね。中層で資源を採掘出来るようになればこちらとしても上々だよ」

「その。石橋支部長。これ以上の交渉は難しいかと思います」

「限界か……」


「はい……その、日常生活の方にも支障が……」

「そうか。お疲れ様。ひとまずゆっくり休むといい」

 石橋支部長は僕の退職を簡単に受け入れてくれた。



 石橋支部長に話したことを知里に打ち明ける。

「孝雄。交渉が終わったということは二度とダンジョンに行かないの?」

「えっ? なんでそういう話になるの?」

「行く理由がなくなるからだけど?」

「友達の家に行くのに、理由付けなんて必要?」

「孝雄。その感覚は凄く危険」

 と知里に窘められてしまう。


「その時は知里が守ってくれるだろ?」

「私。恋敵と会わせたくないんだけど……」

 知里は若干苛立っている様子だった。


「孝雄はずるい」

「ごめん知里」

「別に。もう慣れてる」

 知里は僕の言動に呆れている様子だった。



 今日は雪芽さん達と出会うためにハウスまでやってきた。

「おお孝雄や。久しぶりじゃの」

「久しぶりです雪芽さん。最近中々行けなくてすみません」

「お前が忙しいことは分かっておるが、全然来ないと寂しいのじゃ」

「ははは……ごめんなさい」

「よいよい。冗談を言ってみただけじゃ」

「私が孝雄を連れて来ているお陰で出会えているのに私に感謝の言葉はないの? 雪芽さん」

 僕と雪芽さんが話しているのを面白く思っていないようだった。


「うむうむ。ありがとうなのじゃ知里」

 と雪芽さんは知里のことをあしらっている。彼女の扱いに慣れているようだった。

「むぅ。あしらわれている気がする」

「あ~。ごちゃごちゃうるせぇな。ババア、飯は?」

「エリ―。いいかげんにしろ」

「わっ、わりぃ」


「そもそも思ったけどジャッジはずっとここで暮らしていく気?」

「まぁ。冒険者をクビになった時点で家に帰れなくなったしな」

「えっ? それってどういうこと?」

「ジャッジの家は冒険者一家。モンスター討伐を生業にする家系」

「えっ? そうなの?」

「そう。冒険者をクビになるということが家に知られたら彼女は離縁されてしまう」

「俺。本当のお母さんに捨てられたんだよ」


 ジャッジ。中々の人生を過ごしているな。

「楽しそうな話をしているところ申し訳ないんだけど、悪い話が舞い込んできた。聞いてくれないか?」

 沙羅さんが僕達の間に割って入っていった。

 彼女は僕が辞めた後人間とモンスターとの仲立ちをしていた。


「なにかあったんですか?」

「あいつら。このダンジョンを大改築しようとしているんだ」

「大改築?」

「そう。エネルギー問題を解決するために中層に原発を置こうとか言い始めているのさ」

 そんなの横暴すぎる。


「坊や。私一人だけじゃ押し通されちまう。あんたも交渉の手伝いをしてくれないかい?」

「分かりました。僕も復帰します」

「その言葉を待ってたよ。私達で協力して馬鹿政府の意見を突っぱねてやろう」



 と言って意気揚々と交渉のテーブルに着くことになった。

 交渉の相手はギルドの支部長の石橋支部長。そして今回の計画の立案者の山形さんの二人だ。


「それで私達になんのメリットが?」

 山形さんは僕達の話を聞いた上で言い放ってくる。


「メリットはありませんが、デメリットは大きいですよ。モンスターの反感を買う形で建設すれば原発が破壊される可能性がありますから」

「原発の破壊は避けたいですね。しかし国民感情を逆なでせずエネルギー問題を解決する方法はダンジョンで原発を生産し、電気を引っ張っていくしか方法がありません。あなたも日本国民ならモンスターに襲撃させないように交渉させてください」


「すみません。それは無理です」

「まさかモンスター側に付くということですか?」

「僕は一方的に手を加えることが許せないというだけです」

「そうですか。それならダンジョンに潜ってエネルギー問題の解決手段を探して来てください。いくらなんでも手で採掘したり伐採なんてしていたらきりがないですからね」

 山形さんは無理難題を突き付けてくる。


「ええ。僕には心当たりがありますから」

 そんなことはないが、ここで交渉を打ち切られるよりマシだ。

 僕は出たとこ勝負を仕掛ける。


「心当たりがあるというならこの問題は一か月で解決できますね」

「いいえ。少なくとも一年を見積もっていただきたいです」

「無理です。一か月です」

「せめて十一ヶ月」

「それなら二カ月」

「十か月と半月」

「うぐぬぬぬ。いつまで食い下がる気ですか……分かりました。それなら半年でどうです? それ以内になにかしらの進展がないなら原発の建設を強行します。モンスターが攻撃してくるというなら中層のモンスターを全て殺します。いいですね?」

 粘ったけど全然譲歩しなかった。

 一切当てがないのに、半年なんて出来るだろうか。


「では本日の会議はこれにて終了です。ありがとうございました」

「はい。ありがとうございました」

 

 ハウスに戻った僕は皆に言うのであった。


「その山形という男。めちゃくちゃな奴じゃのぅ」

「はい。最初は一か月でやれって言ってきて」

「坊やがなんとか粘ってやっと半年さ」

「孝雄。当てはあるの?」

「そう」

「でも。まぁ、なんとかなるのじゃ。皆で協力すればな」

 と雪芽さんは言う。

 僕はその言葉に頷く。

 皆も思いは同じらしい。頷いてくれた。


「皆で力を合わせれば必ず解決できる。頑張ろう」

 僕の声に皆が答える。

 僕はこのかけがえのない仲間と一緒に人間とモンスターを必ず繋いで見せる!









 正直言ってネタが思い付きそうにありませんでした。

 プロットなしで書くって一部の天才にしかできないんですねw

 いや、本当に申し訳ないです。エターナルするくらいならって思いました。

 次は書きたいという衝動に負けず、プロットを練りより多くの読者様に満足していただけるように頑張ります。

 次回作もよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オール種族美少女達をチョロイン化? ドスケベフェロモンを使って外交します マイケル・フランクリン @michelxsasx

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ