第2話 私、まだ太ってる?


太った私から、標準体重になり、仕事も順調。



20歳になり、はじめて彼氏が出来た。

同じ職場の同期。

私は料理人、彼はパン職人だった。



休みの日にデート、一緒にカフェに行ったり、

カラオケ行ったり。

ごく普通にお付き合い。


手を繋いで、キスをして。

少しずつ、関係を深めた。


彼は高校生の時、彼女がいたがまだ童貞。

私はもちろん処女だった。


半年ほど経った頃、

いわゆる”初体験”の機会がやってきた。


長期休暇に2人でお泊まり旅行をした時。

お互い口にするわけではないけど、

今日はきっとセックスするんだなと思っていた。


緊張していた。


恥ずかしさや、不安はあったけど、幸せな時間になると思っていた。



彼が言った些細なひと言さえなかったら。



私はきっとこの時のことを一生忘れることはないだろう。




はじめてのセックスはとにかく痛くて、そして処女をすて、大人になった気がして少し嬉しいなんとも言えない気持ちだった。


私は達することはなかったが、彼はちゃんとスッキリできて

普通に終わった初体験だと思う。



しばらく脱力していて、

脱ぎ捨てた服を着ようと、部屋の電気をつける。



何も身につけていない私の身体をみて、彼が言った。



“翠って、結構ぽっちゃりだね”


何気ないひと言。


私には、鋭い刃を持ったナイフのように深く言葉が刺さった。


そう?、、もうちょっと痩せた方がいいかな


ショックで少し小さくなった声で私がそう言えば、


触り心地良いし、べつにどっちでもいいんじゃない?と彼は行った。



楽しいはずの旅行、私の頭の中には彼のひと言がずっと繰り返されて、


鏡に自分の姿が映るたび、太って見える


デブだ、やっぱり、私

まだデブなんだ、


そう頭の中に鳴り響く。


楽しみにしていたホテルの夕飯も、朝食も。

食べることができなかった。


彼には体調が急に悪くなったと嘘をついて、

私は旅行中、トマトジュースしか飲まなかった。



この日から私は、まるで自分に食欲のスイッチがあるみたいに、食べなくなった。




次回に続く。






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摂食障害と生きる @milkjambutter

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