【005】勉強会(仮)
「ごめんね、今日妹も友達とテスト対策なんだって」
バツが悪そうに天鈴が言う。
「一緒にやる訳じゃねえし平気だろ」
天鈴の部屋はいつも通り綺麗に整っている。本人は何も無いつまらない部屋と言っているが、自分の部屋と比べるとだいぶ充実しているように思える。
「ほら、菓子買ってきたぞ」
「いつもごめんね、飲み物持ってくるからちょっと待っててね」
そう言い、そそくさと部屋を出る。
「んで、次のテストの範囲どこだったっけか」
「ちょっと待ってな、確かプリントがあったはず……」
自分の
「兄ちゃん、一緒に遊ぼうよ!」
勢いよく扉が開かれ、自分と朝桐の身体は思わず跳ね上がる。扉の先にいたのはぱっちり開いた眼に高めのポニーテールの元気そうな女の子、そして――
「ちょっ、『リズ』ちゃん。いきなり入ったら失礼だよっ」
彼女とは対照的におっとりとしたボブヘアーでカチューシャを付けた女の子であった。
「いいのよ『シホ』。可愛い妹(+@)が遊ぼうって言ってるんだから悪い顔しないわよ」
ばちりと天鈴の妹と目が合う。彼女は眉を寄せて首を傾げる。
「えーと……兄ちゃんのお友達……?」
しばし気まずい空気が流れる。
「だから言ったのに……」
シホと呼ばれた子が肩を落としながらそう言う。
「こらっ! 大きな音がしたと思って来てみれば何してるの」
天鈴はあからさまに狼狽する彼女の頭にチョップを入れる。
「痛ッ!? だって、兄ちゃんもいると思ったんだもん!」
「やっぱりこうなっちゃうんだね」
苦笑いを浮かべながら、シホと言う女の子は呆れていた。
◆
天鈴の部屋に五人も詰め寄り、小さなテーブルを囲む。
「さっきはいきなりごめんなさい。私は
詩穂ちゃんは紹介に合わせてぺこりと頭を下げる。
「ところでこの人達が葉凪さんと朝桐さんなの?」
「ん、俺達のこと知ってるのか?」
「知ってるも何もいつも兄ちゃんが楽しそうに……」
慌てたように天鈴が莉澄ちゃんの口を塞ぐ。
「あははは、そう! よく覚えてたね、さすが莉澄!」
莉澄ちゃんは褒められたからなのか、胸を張って満足気な顔をしている。口を押えられてはいるが。
「というか、遊びに来たって二人ともテスト勉強はいいのか?」
「いいのいいの、今日は珍しく遊ぶ日が被って、しかも大人数なんだから遊ばないと勿体ないじゃん!」
天鈴の手を外し、彼女はそう言う。天鈴はため息を漏らす。
「……確かにそれも一理あるな」
「おい、朝桐。お前は勉強したくないだけじゃないのか?」
彼は静かに視線を逸らす。まったく、分かりやすい奴だ。
「まあ、莉澄ちゃんとテスト勉強が捗った試しはないし、きっと今日もそうなんだろうなあって思ってたから私はどちらでも大丈夫ですよ」
「ほらほら! 五人中三人がOKだって言ってるし、いいでしょ〜?」
「うーん、葉凪くんどうする?」
なぜか最終決定が自分に委ねられる。少し悩んだが、彼らの言うことも一理ある。なら、妥協案を提示するのが一番良いだろう。
「じゃあ、目標決めて終わったら遊ぶ、でいいんじゃないか?」
「ヒュ〜! 葉凪さん分かってる〜!」
目的がいつの間にかすり替わってしまいそうだが、たまにはこんな日も悪くないと、そう思った。
そして何気なく視線を移したスマホには、浅見から『今日十八時に隣駅でお茶でもどうだい?』とメッセージが届いていた。
NoX 白江桔梗 @Shiroe_kikyo
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