-23- 今まで、そして、これから。

文化祭も夕方を迎えた。校庭・屋台スペースでは、木村が一人で軽食を食べていた。

「キムキム、こんな時間まで食ってるのかよ。」

同じクラスの高橋が声をかけた。軽食のトレーを差し出す木村。

「いや、食わねえから。ほら、キムキム面白いだろ。」

と高橋が言うと、高橋と、いつもつるんでいる橋本も答えて言った。

「話したことなかったけど、こんなやつだったんだ。食いしん坊野郎。」

「おい、キムキムが可哀想だろ。そう言えば、今度写真の撮り方教えてもらうんだ。キムキムの写真の展示見てたら俺もやりたくなっちゃって。」

「え、マジか。俺も教えてほしい。」

うなずく木村。


そして、校内アナウンスが流れた。

「いよいよ、文化祭は終わります。ご来場いただいたみなさん、ありがとうございました。そして、生徒!後夜祭だぞ!盛り上がるぜ!」

高橋と橋本は、

「えーい。」

と言って、二人でステップを踏みながらどこかに走っていった。



一年前の後夜祭の時と同じ教室に木村はいる。軽音部が一年前とは違う曲を演奏している。木村は、LINEの紗良とのトーク画面を開いた。しばらく考えて、スマホの画面を閉じる。木村は、仰向けになって目を閉じる。


そして、文化祭を終えた生徒たちは、次の日を迎えた。


「今日から君たちは受験生になります。栄養と睡眠を適度にとり、受験の荒波にしっかりもまれちゃってください!」

生徒達が無反応だったので、石黒担任は、再び声をあげた。

「もまれちゃってください!」

「えーい。」

と、生徒たち。

「はい、解散!」

石黒担任の掛け声とともに、帰る準備を始める生徒達。

「キムキム、チラシ貼りに行こうぜ。」

「俺も手伝うわ。」

高橋と橋本が、木村に声をかけた。

木村は、手をあげて挨拶した。

木村、高橋、橋本が、それぞれコピー用紙の束を持って机から立ち上がり、教室を出る。コピー用紙を廊下や教室の掲示板に貼っていく。



「『写真・映像研究部』に入りませんか?『高校生の動画コンクール』入賞目指してます!詳しくは2-B木村まで」


【ファースト・シーン −完−】

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ファースト・シーン 鈴木すず @suzu_suzuki

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