第3話 告白ハラスメント?
「ふんふんふーん」
キッチンからは小泉さんの機嫌の良さそうな声が聞こえてくる。仕事中は真面目な感じの小泉さんだが、今は優しさ全開といった感じだ。
はっきり言えば無防備。会社の先輩とはいえ、後輩が手を出さないとは限らないのに。
俺がヘタレ恋愛半諦め勢だったから良かったものの、部長とかに同じことしてたらすぐに襲われちゃいますよ。
「とりあえず一品目〜。簡単なサラダだよ」
トンっと机に置かれたのは美味しそうに盛られた野菜たち。ザ・サラダである。メインはレタスのようだ。
「先に食べてても良いよ。すぐにメインのお肉も持っていくからね」
キッチンからは肉を焼く音と共に良い匂いが漂ってくる。チキンステーキを作っているらしい。
「いやいや、小泉さんが作ってくれているのに食べるわけにはいきませんよ。それより何か手伝うことはないですか?」
「うーん。あんまりないかな。あとはお肉盛り付けたら完成だし。あ、お酒飲むからその準備してて欲しいな」
小泉さんの指示通り俺の飲むレモンサワーの入った缶と、梅酒の缶を冷蔵庫から取り出す。冷やしてあるグラスも一緒にだ。
それを運んだら作業終了。時間にしておよそ10秒。
「まだ何かないですか?」
流石にこれだけで仕事をしたと思ってはダメだ。
「大丈夫だよ。それにしても大原くんは偉いね。ちゃんと手伝おうとする姿勢は高ポイントだぞっ。こういう人が私の旦那さんになってくれればなぁ」
ドキッとした。それもそうだろう。それは告白も同義。中高生ならまだしもお互いしっかりとした大人、社会人だ。
これはつまり……
「ねぇ大原くん。私を奥さんに……お嫁さんにする気はない……?」
俺は恋愛経験が豊富な方ではないが恋愛モノのドラマやアニメはよく観る。その告白シーンはムード、雰囲気を最高潮にしこれ以上ないロマンチックな感じでしている。
しかし、今はどうだろうか。たしかに小泉さんの表示はどのヒロインにも負けないくらいに可愛い。
ただ場所が場所だ。こんなキッチンで料理中に告白なんて。でも、小泉さんの表情は偶に俺をからかう時とは違って本気だ。
「私、本気だよ。なんか突然言っちゃったけど、入社する前から好きだったんだよね。なんでかっていうのは今度言うとして……どうかな? 私とお付き合いしてくれますか?」
「そんなの返事は決まってるじゃないですか。はい。こちらこそよろしくお願いします」
笑顔で答えると小泉さんが俺に抱きついてきた。俺も強く小泉さんを抱き返す。
小泉さんはとても柔らかく、ずっとこうしていたいと思ってしまう。
「ねぇ……私、大原くん……祐輔くんのこと好きだよ」
「先輩……」
名前で呼んでくれたことが嬉しい。昂っている心がさらに熱くなる。
「祐輔くんも私のことも名前で呼んで? 百華って」
くっ! この先輩可愛い! 5分前より可愛さ3倍増しだ。
「百華さん……ってフライパン! 焦げてる焦げてる!」
「ふわぁぁ!」
急いでフライパンに駆けつける百華さんを見てこの人ならずっと一緒に入れそうと思った。
会社の先輩が最高なハラスメントをしてくる 九条 けい @GReeeeN1415
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