第2話 エプロン姿
「おっ泊まり〜♪ おっ泊まり〜♪ 今日は大原くんの家〜」
「はぁ。急に泊まりに来るなんてどういう了見してるんですか。せっかくの金曜日、ゆっくり過ごしたかったのに」
金曜日はゆっくりとレモンサワーを飲みながら映画を観たり、野球を観たりしている。でも小泉先輩がいるとそれも出来ない。
これは後輩の至福のひとときを奪う系ハラスメントですか? いくら可愛い先輩でもそれは許しませんよ?
「良いじゃない。大原くんの教育係になってそろそろ一年。たまには先輩を労ってよ〜」
「まぁお世話にはなってますけどね」
小泉先輩は俺のことをちょくちょく揶揄ってきたり、部署内の女性と話しているとすぐ割り込んできたりと俺にいろいろしてくる。
ただ仕事面では真面目で的確に判断して俺に教えてくれるのでそこでは頭が上がらない。たしかに日頃のお礼をした方が良いのかもしれない。
「だいたいさー。私がこんなに大原くんのこと面倒見てあげてるんだからもっと慕ってくれても良いじゃない」
部屋の隅に荷物を置いた先輩がふくれっ面でこちらを見てくる。最初こそ、可愛い先輩のがそばにいて肩が触れ合ったりすることでドキドキもしていたが、今はもうしない。
小泉先輩から見たら俺は良いおもちゃなんだろう。ちょっかいをかけても文句を言わない後輩。たぶん先輩からの評価はそんな感じだ。
「大原くんはお風呂入ってきて良いよ。私、キッチン借りるね。お料理作っちゃうから」
「えっ? 料理作ってくれるんですか?」
ビールとかつまみを買いに二人でスーパーに寄ったけどいつのまに食材まで買ったんだ。
「当たり前じゃん。土日お世話になるんだからこれくらいするよ」
「えっ?」
今なんと? 土日お世話になる? え? 誰が誰のお世話になるの? これは休日奪うハラスメントです?
「さっき言ったじゃん。あれれ? 聞いてなかったのかな? ダメじゃない。仕事中に言ったでしょ?」
「仕事中にそんなこと言わないでください!」
本当、この人は。たしかに仕事中にボソッと言ってたけど、そんなの冗談にしか思わないって。
「いいからいいから。ほらほら入っちゃって」
すでにエプロンまでして準備している先輩に押されて風呂場へ。
仕方なくサッとシャワーを浴びる。大学で一人暮らしを始めてからはずっとシャワーだけだ。たまに実家に帰ったときだけ風呂に入る。
「お先にありがとうございました。上がりました」
「おっ。なかなか早いねぇ。じゃあゆっくりしてて〜。もうすぐ出来るからね」
慣れた手つきで料理をする先輩はさながら俺のお嫁さんのよう。スーツにエプロン姿ってのも悪くない。いや、最高だ。自称156センチの身長にショートカットは俺の好みど真ん中。
先輩と結婚したらそんな風な感じなのかな……ってそんなわけないだろ。変な妄想するな。煩悩退散煩悩退散!
気を紛らわすためにテレビをつけるのだった。
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