静かなホーム

こと。

そこはだれもいない

ピッ


 定期券を改札にかざして駅の階段を降りる。


 駅のホームにたどり着くと、スカートのポケットからスマホを取り出した。


——時刻は7:45


 あと15分で電車が来る予定だ。スマホを適当にいじって時間を潰そうとするも、朝は眠くて頭が働かない。











 ……ふと我に返る。




 ホームには誰もいない。


 とりあえず、少し先にあるベンチまで歩き、ベンチの端に座った。


 鞄を下ろすと、負荷がかかっていた右肩から重さが消える。鞄にぶら下げた定期券は赤色だった。



「……」



 動くものは誰もいない。


 朝の空気はシンとした重さがあり、ヒンヤリと乾燥していた。


 鞄のポーチからリップクリームを取り出した。

 リップクリームの蓋を取り、唇に塗って鞄にしまう。



さあああ



 風が吹けば、思わずシャツの上に着ているクリーム色のニットを引っ張った。首をすくめてマフラーに顔を埋める。


「寒い」



…………



ガタンガタン……



 遠くから電車の音が聞こえる。ふと、スマホを見ると8時になっていた。


 時間通りにやってきた無人電車に乗ると、赤い車内で窓から外を眺めた。……閑静な住宅街だ。




「さて、今日はどこへ向かおうか。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

静かなホーム こと。 @sirokikoto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ