◆県外の友人(20代男性)

 ――あいつの親は、ゾンビの開発者だった。


 数日前、県外にいる友人の親が、俺の家を訪ねてきた。


「お久しぶりです」

「久しぶり、元気?」

「久しぶり」


 友人の親に話を聞いた。


 今現在、簡単には信じられなかったが、日本ではゾンビ化の薬が政府によって開発されていた。しかし、実験中に不審なテロがあったため、数体のゾンビが日本国内に野放しになっていた。


 さらに、友人の親もゾンビ化の薬の開発に関わっていたため、増殖するゾンビの中でも知能があり、開発者に恨みを持っているゾンビに追われているという話だった。


 友人の親が、息子の友人の俺に伝えたかったこと、それは、蜂蜜酒を友人に渡してほしい、それだけだった。


 なんでも、蜂蜜酒は、摂取した人の周囲にいるゾンビの知能を低下させる効果があるようだ。


 友人の親が県外にいる友人に関わると、ゾンビの開発者に恨みを持った、ゾンビ化していない人間に友人が狙われてしまうため、近くにいる俺に情報を伝えよう思い、本日、我が家に訪れたのだった。



◆◇◆


 友人の親と別れると、俺は蜂蜜酒を県外の友人に郵送するため、土産物屋へ向かった。

 

 普段から閑散とした土産物屋は、なかなか風情があり、興味深い商品が壁一面の棚に陳列されている。


 酒類の棚を見上げると、ミードの蜂蜜酒が上の方に設置されていた。


 脚立を用いて蜂蜜酒を手に取り、レジへ運んだ。

 店員はあまり多くを話さず、「これでいいか?」と言って、宛先は県外の友人で、郵送の手続きをしてくれた。


 俺は自分の分の蜂蜜酒を一つ買うと、店員にお礼を言った。そのままとある場所へ向かう予定だ。


 ――そう、友人の親の家だ。


 持っていた蜂蜜酒をパリンと割ると、割れた瓶を持って友人の家に向かった。


 そのまま友人の親に会うと、割れた瓶を振りかぶった。


パリン!

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ゾンビがいる町 こと。 @sirokikoto

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