第15話 温泉

 爆風が吹き荒れた。それは全ての災難や最悪を吹き飛ばした無慈悲な何かに彼らは感じた。



 ウィルはアルフレッドと別れ、一度都に戻った。元々彼は都の治安維持などを名目に来ていたので当然の行動とも言える。その後は依頼主に平謝りだった。


 依頼をほっぽり出して、魔族との戦闘に出向いたからだ。しかも、結局戦闘能力の差から呆然としてしまった。何もしてないと頭を下げた。幸い、理解のある依頼主で魔族との戦闘に出向こうとしたことなどの理由を説明すると特にペナルティなどもなく、彼はその後、業務をこなした。



 命じられていた時間働き、ウィルは労働から解放された時には既に辺りは夕暮れに染まっていた。



(ここから帰ったら、深夜になっちゃうよね。真夜中の魔物との戦闘は危ない……ここに泊まって行こうかな?)



 そう思ってウィルは宿を探した。しかし、なかなか見つからない。安い宿は既に誰かが泊まっていて部屋は満席状態であったのだ。だが、ここで諦めるわけにいかず、とある大きな旅館のような場所に出向く。



 中に入り、受付の人に話しかけた。


「あ、あの、お邪魔します。泊まりたいのですが……」

「部屋は空いております」

「や、やった」

「一晩、40000ゴールドになります」

「え……?」

「40000ゴールドになります!」




 無理だとウィルは悟りを開いた。自身の今持っている所持金では代金は絶対に支払う事は出来そうにない。仕方ないとどこかでひもじく過ごすことを決意したが……



「あ、ウィルじゃん」

「え!? !?」



 旅館の中には浴衣姿の冒険者バンがぬぼっとした顔で佇んでいた。どうやら、丁度、旅館の渡り廊下を歩いていたらしい。


「もしかして、ウィルもここに泊まる感じ?」

「え、いや……」

「あ、安い宿屋探したけど、泊まれるとこなくてここきたんでしょ? それでお金足りなくて帰る感じ?」

「あ、はい」

「だろうね……すいません、一人追加行けますか?」

「40000ゴールドになります」



 バンは懐から金貨の入った袋を差し出すと、ウィルをクイクイと呼び込んだ。



「ほら、泊まっていきなよ」

「いやいやいやいやいや!! 40000ですよ!? 40000ゴールド!?」

「出世払いで良いからさ。それにこのまま放っておくわけにいかないし」

「え、でも……」

「いやもう払っちゃったし、早く来てよ。あんまり人からの厚意を拒むのって却って失礼だからね?」

「は、はい!」




 バンにそう言われると靴を脱いで旅館の人に預ける。そして、彼はバンの後をついて行った。


「ありがとうございます」

「はいはいー、出世払い頼むねー」

「はい! 必ず10倍で返します!」

「期待して待ってることにしようかな」



 和式のような部屋に入ると、中にはフツメンの女性とフツメンの男性が座っていた。彼等の前には高級な魚やら肉やらの料理が置かれている。


「あら、どうしたの? 

「その子は知り合いかい? 



 ウィルの姿を見て一瞬で、ダンの両親は全てを察し、ダンではなく冒険者バンとしての呼び方へ変更をした。



「泊まるところないみたいで、一緒の部屋で泊めようと思って」

「いいわよー」

「いらっしゃい、君の名前は何というのかい?」

「あ、ウィルです! この度はいきなりすいません!」


「「いいよいいよー、気にしないでー」」



 ダンの両親は間の抜けた声でニコニコ笑顔を向けた。二人の笑顔にウィルも思わずほっこりして、肩の力が抜けた。


「先にお風呂入って来なさいー、待っているからね」



 ダンの母親が二人をお風呂に促す。本当はダンは既に入っているのだが、ウィルともう一度は行って来いと無言で勧められたので彼らは一緒にふろ場に向かった。



(ここって本当に凄い高い旅館だよね……? 倉敷も綺麗、信じられないくらい床も輝いてるし……僕をポンと泊めることが出来るってバンさんって大金持ちなのかな? あの金髪の子も位が高そうだったし……)


(バンさんは一体何者なのか……金髪の子も気になるけど……)


 

 ウィルとダンは脱衣所で服を脱いだ。ダンの上半身が露わになるとウィルは引き締まった肉体に理解しがたい迫力を感じえた。



(――え……?)



 そして、ダンが下着を脱ぐと下半身もすっぽんぽんになる。再び、激震が走る。何故なら、滝で水浴びをした時に見た、勇者ダンと眼の前に居るただの冒険者仲間であるバンが被って見えたのだ。



(え!? あ、え!?)



 とんでもない程の大きさと鋼鉄のように固そうな肉体は自身と同じ生物であるのかと疑問を抱くほどだった。



「ウィル? どした?」

「あ、い、いえ、なんでもないです……、知り合いに、体つきが似てたと言うか……」

「え? ……ウィルって人の体ジロジロ見て一々覚えておくタイプなのかい?」

「ち、違います! た、ただ、その知り合いに色々驚愕したと言うか、特に下半身とか」

「そう言うの良いから、早く入りなよ。皆大体同じだしさ」

「そうか、な……?」




 ウィルに呆れるような表情のままダンは、いや冒険者バンは風呂場に直行した。彼に続くようにウィルも服を脱ぎ棄てて、風呂場に入る。体を一通り洗って、二人は湯船につかった。


 

 湯船につかるとウィルは体から疲れが取れていく不思議な感覚に襲われた。空から下半身が飛んできて、その後に冒険者仲間の下半身に驚いて、今日は下半身の日なのかと悩みも消えていく。




「バンさんって、お金持ちなのですか?」

「いや、一般人です」

「あ、そうなんですか?」

「そうだね。偶々お金持ってたからさ、でも気にしないでいいよ」

「ありがとうございます」



 ふと、バンと会話をしていると彼に聞いてみたいことがあることに気付いた。不思議と彼に心を許していることにウィルは違和感を覚えず口を開く。



「バンさんは勇者ダンって知ってますか?」

「知ってるよ」

「ですよね。勇者に最も必要な事って何だと思いますか?」

「え? 急にどうしたの? 心理テスト?」

「違います!」

「冗談冗談。でも、本当に急にどうしたの? 何か言われた?」

「その、知り合いというか、その人達が勇者に最も必要な事について話していまして」

「ほう」

「一人は力だって。力さえあればそれが答えみたいな感じでして……もう一人は自己犠牲だって、勇者は命を賭けて当然みたいな答えでした」

「ふーん」

「どっちが正しいのでしょうか?」

「ウィルはどっちだと思う?」

「……どっちかと言うと後者、自己犠牲だと思います」

「なるほどね……本質のような、それっぽいような難しいねー」



 ケタケタと隣で微笑むバンの姿にウィルはこの人には既に答えがあるような気がした。


――この人の中ではその答えについて出ているように


 これ以上、自身は何も知る必要も、考える必要もない。一種のアイデンティティを確立している気がしたのだ。だから、畳みかける。



「バンさんは勇者に成りたいって思ってましたか?」

「どうして、そう思うんだい?」

「勘です」

「ふむ、良い勘だね」

「ぼ、僕と一緒です! 僕も勇者になりたくて!」

「君の場合は溢れ出てるけどね」

「そ、それで、今でも勇者に成りたいって思ってますか?」

「いやさほど」

「そ、そうですか」



 どうしてなのか分からないがウィルは肩をガックリと落としてしまった。だが、すぐさま切り替えて、彼に再び問を重ねる。



「では、昔、勇者に成りたいと思っていた時に最も大事にしてたことってなんですか?」

「好きでいる事」

「え?」

「だから、勇者を好きでいる事。憧れを捨てなかったことかな?」

「……」

「やっぱり、好きじゃないとさ。楽しくないでしょ? 基本的に昔は結構好き勝手にしてたんだよね。でも、楽しかった」

「な、なるほど」

「何というかね、必要なのは大事なのは人それぞれだと思うけど、俺は好きで居続けることを大事にしていた気がする。割と人命とか、力とか二の次だった気がする。両方大事だけど」

「……そういう考え方もあるのか」

「割と割り切って生きてたからね……」



 力でも自己犠牲でもなく、ただ好きだから。好きだから楽しいから、カッコいいから初めてみた。それに只管に手を伸ばして……。一体、眼の前の存在の結末はどうなったのか。


 そして、勇者を目指すのは止めてしまったと言う理由は何なのだろうかと再び疑問が湧いてしまった。だが、これ以上これを追及しても答えてはくれない気もしていた。



「僕は……自己犠牲が必要だと思います」

「それは僕も思うよ。ただ、割と昔はそれに疑問持った時期もあった」

「バンさんも?」

「あれ? ウィルもあったんだ」

「あ、ありました。上手く言葉に出来ないのですが」

「へぇ、あっそ」


(な、なんか反応冷たい!?)


 一瞬だけ、バンの反応が冷たすぎることにツッコミそうになったが話の続きが気になるので彼は黙った。


「僕はね。勇者と言うか、英雄とか全部に言えるんだけど……人を助けることって美しいし、カッコいいし素晴らしいと思ってた。でもさ、それをするために危険を冒した人が居てさ、割とそれが讃えられるのがちょっと引っかかったかな」

「――あ」



(それだ……僕の思ってたこと……)



 共感。それが彼を支配していた。視えていた、綻びが。しかし、それを自身に落とし込むことが出来ていなかったのだ。だが、眼の前の存在はそれをいとも容易く出来ていたことに再度驚く。



「何というかね。誰かを助けると免罪符をつけることで死すらも肯定されるのが納得いかなかったと言うかさ……」

「……」

「知り合いにさ、エルフの魔法使いが居てね、あと剣士とか、武闘家とか」

「な、なんか勇者ダンみたいですね。エルフの魔法使いに剣士に、武闘家って」

「でしょー?」



(ノリが軽い……)



 真面目な話の際中なのにノリが物凄い軽いバンにまたしてもツッコミを繰り出すと思ったが再度黙る。そして、眼の前の存在からの話に新家を研ぎ澄ませた。



「えっと、なんだっけ? あー、そうだ。神託って知ってる?」

「神託ですよね? 神からの啓示……英雄の器を持つ者には与えられるって言う……」

「そうそう、よく知ってるね」

「ありがとうございます!」

「はい、どういたしまして。それでね、実は知り合いがその神託を受けてね」

「え!?」

「だから、戦えって周りから言われてさ。それが納得いかなくて……皆が頑張れって、魔族と戦えって指差すからさ。プレッシャーでその子泣いちゃって」

「そ、そんな」

「あ、悲しい話じゃないよ? それで納得いかなくて、みたいなノリで」

「やったんですか!? 神託通りに!?」

「さぁ、どうだろうね?」

「ぼ、僕、話の続きが気になります!」



 まるで英雄譚をなぞるかの如く、語られる内容に思わず話の続きをウィルは促してしまった。なぜなら彼も英雄譚が何よりも好物なのだ。



「そう? まぁ、神託通り、というか取りあえず元凶だけ倒しておいてた」

「す、すごい!」

「でしょー? 魔王とかもうワンパンだよ」

「えええ!?」

「凄いでしょ?」

「滅茶苦茶凄いです!」

「まぁ、嘘なんだけど」

「え?」

「全部、作り話だよ。君、よく騙されやすいって言われない?」

「い、言われます」

「気を付けなよ」

「は、はい」



(な、なんだ嘘なのか……あれ? でも、勇者ダンの英雄譚にそんな綴りがあったような……)



「それで話を戻すけど……最も必要な物か。まぁ、力も自己犠牲も大事だろうさ。人それぞれって感じ」

「どっちも」

「結局、勇者ってさ、力で解決するんだよ。暴力で解決。暴力至上主義って言っても間違いはないだろうね」

「た、確かに」

「こいつ優しそうな魔王だから対話して見ようと思って、3回ほどラリーして、話通じないと思って顔面潰した勇者居るからね」

「え!? 誰ですか!? そんなの聞いたことがない!?」

「僕だよ」

「え!?」

「嘘」

「で、ですよね」




(うっ、また嘘つかれた。気を付けろと言われたばかりなのに……だけど、この人も悪い気がする。嘘を吐くと言う事じゃなくて、



「あとは自己犠牲だっけ?」

「はい、アルフレッドと言う王族の子が行ってまして」

「あぁ、なるほどね。いやぁ、

「らしい?」

「僕とかウィルとかは勇者って存在が既にいるから、それに憧れたり、手を伸ばしたりしたけど、最初の勇者ってそんな概念なかったでしょ? そいつが作った感ある」

「ふ、ふむふむ」

「だから、純粋に助けたいって思ったら勇者やってたのかなってね。それで勇者って呼ばれたような気がするね。まぁ、本当の所は知らんけど、末裔の言いそうな事なきがするよね?」

「で、ですね!」



 思わず、肯定の意を示してしまった。隣にいるバンは欠伸をしながらなにやら考え事を始める。その表情を見て、そして、ここまでの話を聞いてもしかしたら、彼は勇者ダンについて何かを知っているのではないかと彼は感じた。



「あ、あの」

「ん?」

「勇者ダンのことどう思ってますか?」

「勇者ダンだと思ってるけど……」

「そ、そう言う事じゃなくて……さっきみたいに、もっとこう、突っ込んだ意見が聞きたいと言うか……」



 ウィルがそう言うと、冒険者バンは眼を細めた。



◆◆



 ウィルが泊まる場所無さそうなので仕方なく、湯船に一緒に浸かることにした。しかし、下半身で俺の正体を暴こうとしてくるとは……流石は弟子と言った所だろうか?


 まぁ、それくらい誤魔化せるけどね。そして、湯船につかり、色々話していると、ウィルが突っ込んだ質問をしてきた。



「勇者ダンのことどう思ってますか?」

「勇者ダンだと思ってるけど……」

「そ、そう言う事じゃなくて……さっきみたいに、もっとこう、突っ込んだ意見が聞きたいと言うか……」


 いや、俺だけど……。自分で自分の事をどう思っていると聞かれてもね……。話す内容がもう無いから、次は恋バナでもしようかなと考えていたら、こんな質問をしてくるとは……。



 それにもっと突っ込んだこと聞きたいって何だよ。フツメンだから仮面被って、俺様系もやってたから仮面とれませんって言うのが真理だけどね。


 言えねぇ。これは墓まで持って行くと決めている。だからと言って勇者ダン凄いとか言うのもね。こそばゆい、それに自分で自分を褒めるのもしたくない。



「割と大したことないんじゃない?」

「え……?」

「何というか、うん、大したことないと思う。仮面をかぶっている理由も大して意味ない、適当にやってる感あるよね。まぁ、緩そうな考えでやってそう」

「そ、そんなことないです! ゆ、勇者ダンは滅茶苦茶凄い人なんです! ば、バンさんには色々お世話になってますけど、ゆ、勇者ダンは本当に凄いんです! わ、悪く言わないでください!」

「あ、はい」



 どんだけ俺のこと好きやねん。しかし、ここまで言われてしまうと流石にこれ以上ディスるわけにもいかない。ここは勇者ダン、もとい俺を少しだけ持ち上げよう。


 ウィルも機嫌悪くなりそうだし



「しかし、勇者ダンと言えば色々魔王を倒してきたけど、ウィル的に一番好きな魔王との戦いってある?」

「全部好きです!」

「あ、そう」

「ででで、でも、最近見返している勇者ダンの物語に不死身王イフリートとの戦いがありまして! それにドはまりしてます! まぁ、ずっとハマっているのんですけど」

「ふーん、不死身王イフリートねぇ……。あー、恩恵ギフトがかなり厄介や魔王だっけ?」

「そうなんです! 過去保存バックアップという凶悪な恩恵ギフトを持って居たんです! 僕の中では勇者ダンの戦ってきた魔王の中で最強クラスだと思ってます! って全部魔王は最強クラスなんですけど!」

「そう……えっと、確か過去に自身の肉体を保存して死んだらそれを元手に修復、蘇生が出来るんだよね? しかも過去は一秒ごとに保存されているから、ほぼ無限に肉体がある」

「よくご存じで!」


 まぁ、戦ってますから。


「これが本当に凄くて……勇者ダンと不死身王イフリートは三日間戦い続けたらしいです! それが本当に死闘だったらしくて! 三日ですよ!? 三日!? でも、最後は勇者ダンが何とか、上手い事やって倒したらしいです……この辺はぼかされていてよく分かっていないです。一説には命を削って封印したとかも言われてて、でもでも、封印とかも所詮一説で噂と言うか……」



あ、それは嘘だな。その魔王ってあんまり強くなかったんだよね。基本的にワンパンだったんだけど……その過去保存バックアップという恩恵ギフトが厄介だった。


倒しても倒しても、何度も蘇生してくるからさ。ただ、俺も自称・勇者の加護ブレイブ・スピリットを持ってから体力無限回復みたいな感じで無限に動いて、勝負は平行線。


ほぼ作業ゲーで魔王三日間撲殺してたら、流石に心折れたのか発狂して自殺したんだよね。うん……流石にそんな惨い殺し方をしたとは言えないからさ……命を賭けてあの、封印しました?


 みたいな感じで濁したんだよね……いや、だってさ当時の俺はリンにそんな事言えないじゃん? 


『あ、アンタ……そんな惨い殺し方したの? み、三日間、無限撲殺したって……』



無限撲殺むげんぼくさつ名前はカッコいいし、実は気にいってるし、必殺技として俺の中には登録してるけど……絶対表には出せないよね?



 無理無理、リンにはとても言えなかったわ。あとサクラにもね。サクラ優男だし、明らかに俺の悪なイメージが強くなっちゃうもん。三日間魔王を無限撲殺する勇者ってヤバいじゃん?

 

 自分でやっといて思うけど、俺ヤバいよ。自分ですら引くんだから他人とかもっと引くわ。




「本当に凄いなって……伝説ですよね」

「だね」

「でも……勇者ダンはその積み重ねで……」



 ウィルの顔がなんだか暗い。あ、もしかして、呪詛王の呪とかの件と今回の一件を重ねているのだろうか。両者共に全く関係ないし、ぴんぴんしてるんだけど……。


 そう言う事にしておこう。


 しかし、ウィルは分かりやすいなぁ。このままだといつかぼろを出しそうだ。一応さ、俺って抑止力的な存在でもあるからさ。弟子を作ってるとか引退とか、呪いとかバレたら不味いのよね。


 でもウィルは分かりやすいし……これはちょっと強請って耐性を付けた方が良いな。



「勇者ダンが何だって?」

「え!? な、なんでもありません!」

「そう、そう言えばさ。ウィルって始まりの剣使ってるの?」

「そ、そうなんです」

「本物?」

「本物です!」

「へぇ、どこで手に入れたの?」

「中古――」

「――本人から貰ったとか?」

「ッ!!!!!????」



 いやいやいや、分かりやす。口がもう、マーライオン位空いてるよ。湯船でてくるんかいくらい空いてる。しかし、本当に分かりやすいな、今後絶対関係性に勘付いたり、怪しむやつは出てくるだろう。


 その時に、この反応したらバレる可能性上がるな。いや、でも俺は全ての事情を知っているからそう言う見方をしてしまうとも考えられるな。



「いいやいいやあいあ! 中古の骨董品屋です!!」

「え? 本当に?」

「ほ、本当です」

「因みにどこにあるの? そのお店は?」

「え、えー? あ、お、王都に……」

「ふーん、じゃあ常連なんだ? そのお店の」

「い、いえ、ち、違います」

「あの剣が本当に始まりの剣って証拠出せる?」

「今は、む、無理です。で、でも本物と言うか……」

「えー? でもさ、常連でもない中古のお店で買った剣を本物だって言い切れるのってちょっとおかしくない? 常連で店主を信頼してて、買ったとかなら納得できるけど、そうでもないみたいだし。しかも、本物と言う証拠もない。でも、君は本物だって言い切ってる……というか心の底から信じてるみたいだし……。大して関係性もない中古屋から買ったにしてはちょっと不自然に見えると言うか……あれ? それ、本当に中古の骨董品屋で買った奴?」

「い、いや、その、な、なんというか……」



 これくらいにしておこうか。可哀そうだし、言い訳考えるのに視線が東西南北周回してるしさ……。だけど、ウィルはもうちょっとポーカーフェイスとか嘘とか覚えた方が良いと思うんだけどなぁ。


 戦いでも馬鹿正直に突っ込んでいきそうでちょっと不安……。意外と期待してるんだからさ。もうちょっと頑張ってくれよ。まぁ、今でもかなり頑張ってるから口には出さないけど。



「嘘嘘、ごめんね? 一目見た店主が途轍もなく信頼できそうな人だったんでしょ?」

「そそそ、その通りです! いやー、凄い信頼できる人で!!」




 うむ、本当にピュアだな……。しかし、俺との関係性は自分で言うなと言っておいて、自分で強請り、更には自分でフォローすると言う……俺って無限撲殺やるくらいだし、意外と外道だな……。


 だが、ウィルの為だから今後もちょくちょく、関係性は突っ込んでいこう。俺ほど突っ込む人はいないだろうし、俺に慣れればある程度は大丈夫だろう。


 だけど、こういうのって前世だと、『愉悦』野郎とか言われそうなムーブだ……。だってね、自分で全部仕組んで、自分で焦らせて最後はフォローするってね……。


 まぁいいや。ちょっと可哀そうなくらい追い込んだし、夕飯は沢山食べて貰おう。結構高いから鱈腹食べなさい。両親もウィルみたいな好青年一緒に居たら楽しいだろうしさ











―――――――――――――


こういうのが見たいとか、こう言う展開が望ましいとかあれば是非言ってください。感想欄でそう言うのを求めて良いのか分からないので、活動報告でも募集しています。


近況ノート↓


https://kakuyomu.jp/users/yuyusikizitai3/news/16817139556577580257

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