第11話

「ここか?」

『はい、ここです』


不動産会社に入りエルに言われた場所を伝えと大歓迎されタダ同然の金額を提示、直様書類と鍵を渡された。なぜか疑問を感じていたがその答えがわかった


「エル、もう一度聞くが、本当にここか?」

『はい、間違いありません』

「いやだって、これは・・・」


俺はもう一度エルに指定された場所を見る

そこには石で作られた塀(所々崩れている)で囲われ、庭は広く(ゴミ等が散乱している)井戸(滑車は壊れ井戸に突き刺さっている)もある立派な平屋(家自体が斜めに立っておりいつ倒壊してもおかしくない)が佇んでいた。


「鍵は渡されたけど必要ないな」


だって扉ないんだもん

庭に扉だったものがぶん投げられてはいるが・・・


「不動産屋の態度も分かるな」


不良物件に頭を悩ませているところに俺が引き取ったということになる。不動産屋には俺は救世主に見えただろう。


「エルなぜここを提示したんだ?」

『主様のご希望の中に「隣人とのつき合いがない場所」とありましたのでこちらを提示しました。』

「そりゃないよな!!だってここは」


ここスラム街ですもん!!

クエーグ帝国ガイアス領領都ガイアスの闇の部分

領都北側の端にあり外壁の直ぐ側にあるせいか日当たりがすこぶる悪そうだ。


「これでは住めないだろ?中を見なくても分かる。これでは外にいるほうがマシだろ」


季節は春始め

日中は暖かいが夜間はまだ寒い


『主様、まずは掃除から始めましょう』

「掃除?」

『はい、時空の腕輪からコレクション『殲滅執事バトラ』をお出し下さい』 

「・・・分かった」


名前から色々突っ込みたいがエルが言うのだし、ここは信じて見よう

どうかセリーみたいな面倒なやつではありませんように・・・

俺は時空の腕輪から『殲滅執事バトラ』を出す。セリーもそうだったがバトラも見た目は執事服を着た人形にしか見えない。エルに促されるままバトラに魔力を流し込む。セリーの時と同じで一定量流し込むとバトラ人形が光り宙に浮かぶ、そして一際光ると


「お呼びでしょうか我が主?」


黒髪の美形が現れた

それを見た俺が思ったのは


セリーヌさんは面食い


だった・・・


『主様失礼します』

「エル?」

「おや?ふむふむなるほど、畏まりました我が主」


バトラに啞然としているとエルが急に光りだした。それと同時にバトラが反応し俺が一言も言っていないのに何か納得すると礼をとった


「では失礼して」


そして俺に背を向けると


「アーススバイク」

「は?」


バトラが魔法を演唱すると俺が購入した庭付き平屋の塀(笑)を取り囲むように地面から棘が生え、それが左右から一気に持ち上がり平屋事挟み込んだ。もちろん平屋や井戸?と塀はバラバラになった。そして魔法が消えると残ったのは残骸が散らばる荒れ果てた大地

思考が追いつかない俺を他所にバトラはさらに魔法を使う


「アースウェーブ」


大地が波打ち次々と残骸を飲み込んでいく

そしてまたたく間に土しかなくなりその区間のみ整備された大地が残された


「我が主、こちらでよろしいでしょうか?」

「え、あ、うん、よろしい、です?」


一体何がよろしいんだ!?

たしかに住めないとは言ったがこれでは・・・

何もなくなった真っ平らな地面、それを見た時


『主様、次はコレクション『何処でもハウス』を出してください』

「え、あ、うん」


エルに言われ時空の腕輪からコレクションを出し再び魔力を流す

今度のコレクションは家の模型みたいな形をしている。2階建ての家屋で家というより屋敷と言ったほうがいいだろうか?そのコレクションもまたバトラと同じく光り、気づくと眼の前には立派な屋敷が聳え立っていた。


もう、こんなのばかりで疲れちゃう・・・

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幽閉された王太子は自由ライフを満喫することにしました 伊佐波瑞希 @harukikouhei

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