第2話 これは早急に鍛えねば
商店街から少し裏手に入った仄暗い路地に、夏凛は追い詰められていた。
買い物途中、気づけば後ろを付けられていると思い、振り切ろうと大通りから離れたのが失敗であった。
「な…なんなんですか貴方達は!?」
認識できる範囲内には、男が4人。その内2人は武器と思しき物を腰に差している。
リーダーと思われる長身の男が返答してきた。
「なぁ〜隠しても無駄だぞー、あんた、どっかの貴族かええとこのお嬢さんじゃないのかい?お忍びかな?動きもなんかおぼつかない様子だったしよぉ。」
「失礼ですわね!私はただの町娘ですわよ!」
「にしてはここら辺で見たことない顔してるし、顔立ちやスタイルはかなりの上玉、時折フードから見える髪も相当綺麗に見えるけどなぁ?」
「おうリーダー、とりあえずその上着脱がせて確かめてみましょうや。」
後ろにいる大柄な男が加勢しようと近づいてくる。
「やめてください!!!」
「おっと、少しでも抵抗するなら…」
そうしてリーダーの男は武器を取り出す。銀色の鋭利な刃を光らせ、夏凛を威嚇する。
「おう、後ろの奴!万一のために魔法準備しとけ!」
言われるがまま、残りの下っ端と思われる2人がすぐに打てるよう魔法の準備を始める。
「(武器持ちが2人、魔術使いが2人か…)」
路地の上、どうにかして無傷で夏凛を助けようと柚乃は少し前より様子を伺っていた。
「こんなことしてる時点で、あいつらに情けは1ミリも無用よね。」
一方、夏凛は想像以上に落ち着いていた。
「(あの時の魔物達に比べればそこまで怖くありませんわね…隙を見て逃げますわ…)」
気づかないうちに成長していたのかもしれない。だが、流石に舐めすぎていた。
不意に、路地横から黒猫が飛び出し、男達の横を抜けていった。
動くものを自然と追ってしまうのが人間というものだ。男達はそれに一瞬目を向けた。
その瞬間を見逃さず、夏凛は反対方向へ駆け出す。
ーーーだが運動音痴の夏凛が大男達に勝てるはずもなく、すぐ捕まってしまう。
今度は一ミリも抜け出す隙間もないように、壁を背に取り囲まれてしまった。
「(あ、これダメなやつだ………)」
絶望の二文字が頭をよぎる。
「(あぁもう、一周回ってムカついてきましたわ!!なんで私はこんな目ばかりあうのかしら!!」
たが幸運にも絶望が憤怒に書き換えられた。
柚乃はいつ動くか悩んでいた。早々に助けても夏凛の成長に繋がらない、と考えていたからだ。
「(流石にまずいですね、あんまり野蛮なことはしたくなかったのですが…)」
柚乃がタイミングを見計らい動き出そうとした瞬間のことであった。
一瞬、夏凛の周りが光ったかと思うと----轟音と共に爆発が起こった。
「…は?は?なに…が?……姫様!?」
一目散に駆けつけると、数分前まで威勢の良かった男達は見るも無惨な光景となっていたが、夏凛はどうやら無事のようであった。
「ご無事ですか?姫様?」
「うん、よく分からないけど、平気よ。」
ひとまず、汚れてしまった服を着替えるため、夏凛をお姫様抱っこし、宿へ戻るのだった。
私がお仕えするお嬢様がどう考えても雑魚すぎるんですけど!!! 神白ジュン @kamisiroj
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