第9話 エルフと水浴びとフルコース

「あうぅ……まだ、あちこち痛い……」


 昨夜の失態の後遺症にベルはまだ苦しまされていた。土の地面で野宿する事に慣れた彼女にしても、硬い石畳の上で一夜を明かすのは生やさしい物では無かった。


「テオー、もうちょっとゆっくり歩いてー」


「わぅ?」


 体のあちこちを痛みから庇いながらヘロヘロと歩くベルとは正反対に、テオは弾むような足取りで彼女を先導するように歩いていた。


 これも昨夜一人で楽しんだ罰なのだろうかと、ベルは思わずに居られない。


「うぅ、ごめんてばー……次に美味しそうな物見つけたらテオ優先にしてあげるからー……」


「わっふ! わんわん!」


 ベルの懺悔を理解してか、先行していたテオは彼女の元へと駆け戻っていく。


「テオ……っ! 許してくれるの――あら?」


 相棒を迎えようとしゃがんで両手を広げたベルの手を、テオはすり抜けていった。肩透かしを食らったベルはその場で呆けてしまう。


「う……切ない……」


 自分を無視して何処へ向かうのかと内心 涙目のベルが振り向くと、吠えながら空へ向かってジャンプを繰り返すテオの姿が見えた。


「わう! わう!」


「ちょっとテオー、何して――ッ!」


 そんな相棒の奇妙な行動を訝しんだベルは、飛び跳ねるテオの視線の先で上空を流れて行く何かに気づく。それは悠々と空を飛ぶ細長い首をした黒っぽい一つの影だった。


「あれは――カモ!? って事は!?」


 優れたエルフの弓手であるベルの視力が、その影の正体を射抜く。それは近くに水場がある可能性を彼女に導き出させた。


 カモのあらゆる調理法と一緒に。


「テオ! 今日はカモのシチューよ! 昨夜のお詫びに美味しい所は最初にアナタに上げるわ! 見失っちゃダメよ!」


「わん!」


 ベルは自身の知るカモの調理法から今できる最善を選び取り声を張り上げた。二人はカモの飛んでいった方向へと勢いよく駆け出して行く。テオは楽しそうに全力で走る。一方、荷車を引いたままのベルは走りにくそうだ。


「背中が軽くなったのは良いけどっ……走りにくいのが弱点……ねっ!」


 それでもベルは諦めずに目一杯の速度で走る。その目は獲物を狙う狩人のそれだった――






「……私にあれは射抜けない……」


 どうにかカモに追いついた所でベルは膝をついていた。獲物までの距離は十数メートルと言った所だろうか。彼女の腕を持ってすれば簡単に狙える距離だった。彼女の視線の先には先ほど見かけたカモとは別に、更にもう一匹のカモが緩やかな流れの川に浮かんで佇んでいる。


 ――数匹のヒナと一緒に。


「……くっ!」


「ハッハッハッ――――」


 仲睦まじいカモの家族を前に悔しげに歯噛みするベル。そんな主人をよそに、全力で駆けっこを楽しんだテオは満足げに尻尾を振りながら荒い息を整えていた。


 たとえ子連れであろうと、必要とあらば仕留めて見せるのが熟練の狩人ではあるものの、ベルにはまだ非情になりきれない甘さがあった。


「ごめんなさい……テオ……」


「わぅ?」


 自身の未熟さを嘆いて謝るベルだったが、テオにはそれを気にした様子は微塵も無かった。




「はぁ……それにしても、結構大きな川ね」


 気を取り直したベルは周辺を見やる。カモが優雅に浮かんでいるこの川の幅は二百メートルはあろうかと言うところだった。


「当然のように橋も鉄と石で出来てるわ……」


 ベルの立つ橋のたもとから対岸まで灰色の石畳が続いており、それは当たり前のように鉄で支えられていた。その滑らかで平坦な道は左右の川を見なければ、そこが橋の上であると気付かないかも知れないと思うほどだった。


「水も綺麗……そうだ水筒に補充しないと……」


 人の生活圏にある川は多少なりとも汚れているのが常であるが、周囲を建物に囲まれているにも関わらず水は澄み切っていた。たとえこの川を上流まで遡ったとしても、人の営みが存在しない事を改めてベルに感じさせる。


 綺麗な水が手に入る事と引き換えのその情報は、少しだけ彼女の表情に影を落とした。


「この国は木の代わりに鉄鉱石と石でも生えてたのかしらね?」


 内心を誤魔化すように冗談を飛ばすベルだったが、笑ってくれる人はそこには居なかった。


「わう! わんわん!」


 そんなベルをよそに、テオは興味津々の様子で川岸へと駆け出していく。


「あ、こら! んもぅ、下手に水に近づくと危ないわよ!」


 荷車を引いたまま川岸に降りるのは難しいと判断したベルは、一瞬考えた後、どうせ盗みをする人間も居ないのだと、荷物をその場に残してテオを追いかけた。


 気ままに振る舞う相棒にベルは困った顔をするも、今はその自由さに心が軽くなる思いだった。

 

「川岸まで隙間なく石で覆ってある……どれだけの手間とお金を掛けたら、こんな事が出来るのかしら……」


 テオを追いかけながら川岸に降りて行ったベルはそんな事を考えていた。どうやって作ったのかもさる事ながら、これだけの資材をどのように確保したのかも不思議でならなかった。


 やがてテオに追いつくと、そこでは無邪気に水遊びに興じている姿があった。


「危ないから水の中は入っちゃダメよー!」


「わん!」


「その間に私は水の補給をしちゃおうかしら」


 ベルは肩掛けバッグからほぼ空になっていた小さい方の水筒を取り出し、川から水を汲んだ。その色は無色透明で不純物も無く、最初に入っていた水とも遜色が無かった。


「――プリフィケイション」


 念のため浄化魔法を唱えてから口に含んでみる。変な臭いや味はせず、問題なくそのまま飲料水として使用できそうだった。


「うん、大丈夫そうね。置いて来ちゃったから大きい方の水筒も取りに――っと、そうだ丁度良いから洗濯もしちゃいましょう! テオー、ちょっと一人で遊んでてねー、気を付けるのよー」


「わぅ!」


 ベルが今の白い服に着替える前に着ていた一張羅は暫く洗濯も出来ていなかった。機会があれば綺麗にしたいと思っていた彼女は、思いがけずその時が来た事に喜び、荷物を取りに戻った。


「服と水筒っと……替えの下着も洗っちゃうか」


 空の水筒と洗濯物を持って水辺に戻って来たベルは、大きな方の水筒にも水を汲み、一張羅と下着の洗濯を始める。


「やっぱり綺麗になると気持ち良いわー」


 ベルは洗った衣類を近くの鉄の柵に掛けて干していく。そこでふと自身の袖が汚れている事に気付いた。


「あー、地べたで寝たせいで折角の白い服も汚れちゃったかぁ……」


 ベルが上着を脱いで目の前に掲げてみれば、背中の犬の刺繍は埃っぽくなっており、その他もあちこちと薄汚れてしまっているのが分かる。


「いいや、これも洗っちゃえ!」


 ベルは手早く上下を脱いで下着姿になると、服を川に漬けてじゃぶじゃぶと洗っていく。すると今度は体の汚れも気になって来る。


 森に居た頃は泉で水浴びをする事は普通だった。しかし、ここは見通しの良い川辺であり、周囲には建物も沢山ある。


「うーん……ちょっと抵抗が……いや、でも……いいかな?」


 ベルが周囲を見ても人の気配は当然無い。強いて言えば横でテオが水遊びを楽しんでいるだけで、その他にはカモの家族が川面に浮いているだけだった。


「……ま、いっか! どうせ誰も見てないんだし!」


 覚悟を決めたベルは下着も脱ぎ捨てて、川へと入って行く。水は少し冷たく感じたが、汚れも汗も洗い流せる快感を妨げるほどでは無かった。


 一度頭まで水に浸かると勢いよく顔を上げる。


「ぷはぁっ! 覚悟を決めちゃえば気持ち良いものね!」


 頭を数度振って水気を払うと、晴れやかな顔でベルは全身を撫でるように洗って行く。彼女にとっては久しぶりの水浴びであった。


 ベルの整った目鼻立ちを流れ落ちた水は、ぷっくりとした唇を果汁が滴る果実のように瑞々しく濡らした。その一方で、大きな目にある豊かで長いまつ毛は水滴を湛えて煌めく。


 彼女の張りのある肌は、日焼けを知らないかのように陽光と水滴を弾いて白く輝いている。母親譲りのプラチナブロンドの長い髪は水に濡れ、しっとりと胸元に貼り付き、さながら繊細な細工のレースのように緩やかな双丘を艶やかに飾る。


 もしもこの瞬間を見た者が居たならば、ベルフェームレボアメイユール森で一番の美女と名付けた父親の正当性を認めた事だろう。しかし、同時に彼から命を狙われる事になるかもしれない。




「あ、着てた下着も洗っちゃえ」


 ついでとばかりに、ベルは脱ぎ捨てた下着を拾い川で洗う。その姿には色気も何もあったものでは無かった。


「はー……なんだかちょっと開放的で良いかもー……」


 ベルがそんな危うい事を考えていた時、テオは水辺で跳ねまわり、近くに居る小魚を脅かして遊んでいるようだった。


「わっふ! わっふ!」


「もう、お魚虐めて遊んぶなんて悪い子――――ハッ!?」


 水遊びをする我が子を見守るかのように微笑んでいたベルだったが、ある事に気付いてテオを引っ掴んで小脇に抱える。


「きゃぅん!?」


 そしてそのまま荷車の所へと猛然と走った。




 荷車を置いていた橋のたもとへと戻ったころには、ベルの少々乱暴な行動のせいでテオは目を回していた。


「わーぅー」


「カモはダメでもこれなら……」


 ベルは荷車に括っておいた今まで出番の無かった弓を手に取る。弦を数度、軽く指で弾いて調子を確かめるとテオへと振り向いた。


「私、魚獲りは得意中の得意なんだから!」


 そう言って無い胸を張るベルだったが、その手元にあるのは釣り竿ではない。


「わーぅ?」


 ベルは自信満々に言うも、テオはまだ少し目が回っていて伝わっていないようだった。


「ふっふっふ……何も釣り竿を使うだけが魚獲りじゃないのよ……」


 ベルは不敵に、そして得意げに笑って見せた。矢筒から大きな返しのついた鏃を持つ矢を引きぬく。そして手荷物をまとめるための麻紐を取り出すと、慣れた手つきで矢に結び付ける。彼女は水中の魚を弓で射抜く漁法を得意としていた。


「そうよ、これだけの川だもの……大きな魚の一匹や二匹……」


 準備を終えたベルは橋の手すりから身を乗り出し、目を皿にして水面を見つめる。


「――居たっ!」


 橋の上から見渡したお陰か、ベルは大型の魚影を難なく発見する。その距離は先ほどのカモよりも遠い。


「見てなさいよー……一射で仕留めてみせるんだから……」


 ベルは矢を番え弓を引き絞る。その目はかつて無いほど真剣であり、視線で獲物を貫けそうな強さをしていた。彼女のただならぬ気配に、テオも固唾を飲んで見守っている。


「――――っ!」


 ベルが短く、鋭く息を吐くと同時に矢は勢い良く飛んでいく。追いかけるように麻紐が空中へと放り出され、あっという間に獲物と彼女の間を一直線に結んだ。


「よしっ! どう、見てたテオ!?」


「わぅん!」


 宣言通りに見事一射で射抜いたベルは得意げにテオへと振り返る。テオもそんな主人を称えるように吠えてみせた。


「ちょっと弱るのを待ちましょうか」


 再度ベルが川を覗き込むとそこでは、エラの辺りを貫かれた魚が跳ねるように水面から顔を出し、頭を左右に振って暴れ大きな波を立てていた。


「せめて美味しく頂きます……」


 その様子にベルは略式の祈りを捧げて黙す。




 暫くして、ベルは動きの弱まった魚を落とさないよう慎重に引き揚げた。その魚体は銀色に光り、鈍色の背にあるヒレは鋭く尖っている。そしてその大きさはベルの腕の長さを超えており、非常に食べ応えがありそうだった。


「思ったより大きかったわ……残しても悪くなっちゃうだけだからね、全部食べ切るわよ、テオ!」


「わう!」


 ベルの宣言にテオが答えたその時、橋の上に風が吹き抜ける。


「ふぁ……ふぁぁ……」


 大きな魚を手に自慢げだったベルは鼻をひくつかせる――


「へぷちっ!」


 情けないクシャミをした彼女は全裸だった。






「……服は乾くまでもうちょっとかかりそうかなぁ……」


 ベルは洗濯物の乾き具合を見ていた。まだだいぶ湿り気の残るそれらに、着替える事を諦めた彼女はそのまま本日の食材へと向き直る。


「それじゃあ……今日はこのお魚を使ってフルコースにします!」


「わぅーん!」


 ベルは少しもったいつけてから高らかに宣言した。下着姿に外套一枚という、この場所でなければ憲兵に突き出されそうな格好したまま。


 そんな主人の格好を気にした様子もないテオは楽しげに吠えて応える。


「とは言ってもフルコースなんて食べた事無いんだけどね」


 彼女の知るフルコースとは、何だか高そうな場所で何だか高そうな料理が、前菜だ、メインだと一杯出て来る何だか凄い物、と言った程度だった。


「とりあえず捌いていきますか」


 ベルは包丁を取り出すと慣れた手つき、とは言い難いものの悪くない手際で魚を捌いていく。


 鱗を引いて、腹に包丁を入れエラを掴んで引っ張るとずるりと内臓が引き摺り出される。


「内臓食べる?」


「わん!」


「じゃぁ、前菜はこれでよし、と」


 コース料理の一品目をテオが美味しく頂いている間に、魚の頭を落とし川で腹を洗い流す。その後、中骨に沿って包丁を入れ、尻尾から頭の方へかけて半身を切り出すと透き通るような綺麗な白身が現れる。


「わぁ、美味しそうな白身……」


 ゆっくりではあるが堅実な作業によって綺麗な三枚おろしが出来上がる。頭と背骨は後で使うので塩をまぶして脇へ置いた。


「ふふふ。あの手伝いがここで役に立つとは思わなかったわ」


 かつての旅の途中、魚を食べたい一心で漁師の手伝いをした経験が活きていた。




「えっと、前菜の次はスープだったからしら?」


 ベルはコース内容をうろ覚えながら再現しようとしていた。


 竈になる鉢を使って火を熾し、手鍋に川から水を汲んで湯を沸かす。その間に昨日のテントでの戦利品の中から具になりそうな物を探していく。


「緑の豆ととうもろこしと……賽の目切りの人参かしら、コレ? スープの具には良さそうね」


 食べ応えもありそうな手のひら大の物を選び、容器を開けた。


「お、良い感じね。――うん、悪くなってる様子は無いわね」


 そこにはベルの期待通りの物がみっちりと詰まっていた。試しに一つ口へ入れてみると、いつ収穫されたのかも分からないその野菜は鮮度が落ちた様子も無い。


「本当にどうなってるのかしら、この容器……」


 ベルがしげしげと容器を観察していると、やがて手鍋の湯が沸く。


「漁師さんの話だと魚の頭とか背骨とか良い味が出るんだったわよね?」


 塩をした頭と背骨を熱湯で軽く洗い流したら鍋へと放り込み、火力が強くなり過ぎないように世話をしていく。


 やがてある程度出汁が出たと思われる所で、切り分けた白身と容器の中身を手鍋へと入れる。そしてベルはおもむろにサフランの小瓶を取り出した。魚介に合う香辛料と言えばサフランと聞いていた彼女は試す機会を窺っていたのだった。


「こ、ここでサフランを一つまみ……」


 ベルは高価な香辛料を震える手で手鍋へと振り入れた。様子を見ていると徐々にスープに色が出始め、香辛料らしい胃を刺激する香りが漂ってくる。


「んー、良い匂い……なんとなく異国感のある香りね」


 それはどこか上品さを含んだ、嗅ぐ者を高揚させる芳香だった。


 ベルはすぐにでも食べ始めたくなる欲求を抑えて、手鍋を覗き込みながら具材が煮えるのをじっと待つ。いつの間にか前菜を食べ終えたテオもその脇で同じように座り込む。その様子はさながら親子か姉弟のようだった。




「頭はテオが食べる?」


「わぅん!」


 薄味好みのテオの分を取り分けた後に塩とコショウで味を整え、コースの二品目であるスープが完成した。味見とばかりにベルは早速スプーンで白身をほぐし、一口掬って口へと運ぶ。


「ほぁ、温まるぅ……そして美味しい……」


 クセのない淡白な白身魚に頭と背骨で取った出汁が味に厚みを出し、そこに香辛料が彩りを加え華やかに仕立てていた。


「私ってば料理の才能あったのかしら?」


「わん!」


 ベルの冗談交じりの発言に、魚の頭と格闘していたテオが肯定するように吠える。


「あら、お世辞が上手。ふふっ、もうちょっと冷ましてから食べた方が良いわよ」


 熱々の魚に喰らいつこうとするテオの頭を撫でてから、ベルは次の料理へと取り掛かって行く。




「さて、メインはシンプルに焼きましょうか」


 手鍋のフタにもなるフライパンを使い、大きく切った切り身を皮目からじっくり焼いていき、ほどよく焼けた所でひっくり返し身の方にも焼き目を付けていく。


「よし、こんなものかな。はい、先にテオの分」


「わぅ!」


 スープ同様にテオの分を取り分けた後、ベルは自分用に味付けをしていく。そして彼女に用意できる精一杯の白身魚のフルコースが完成した。




「なんだかスープのが豪華な感じになっちゃったわね……まいっか!」


「わぅ!」


「あえて言うなら……白身魚のフルコース ~カリカリを添えて~ って感じかしら?」


 二人の前にはサフランを効かせた白身魚のスープに、シンプルなソテー、そしてボウルに盛ったカリカリが品数を増やすために並べられていた。


 ベルの演出とは裏腹に、もはやフルコースと言うより大衆酒場の宴会料理の様相を呈している。


「それじゃ、いただきます!」


「わん!」


 ベルは略式の祈りを捧げ、ソテーから手を付け始める。


「おぉ、身がふわっふわ……」


 フォークを刺しただけで分かる柔らかな白身は、ベルの口の中でほろりと崩れ、淡白ながらも直球な魚の旨味を感じさせる。


「はふっ、やっぱり魚とシンプルな塩味は相性抜群よねー」


「がふがふ! がっふがっふ!」


 ベルは久しぶりの新鮮な魚の味に存分に舌鼓を打つ。その横でテオは豪快に魚の頭を齧っていた。自身の頭と同じくらいの大きさの魚の頭に喰らいつく様は少々猟奇的である。


「慌てて食べると骨が刺さるわよー」


 そんなテオをベルはむしろ微笑ましく見守る。ボリューム満点の豪勢なフルコースを楽しむ二人の和やかな声は暫く辺りに響いていた。






「あぅ、食べ過ぎてお腹が苦しい……」


「わぅ……」


「なんとなくでカリカリまで添えたのは失敗だったわ……」


「わぅ……」


 大きな魚を丸々一匹食べつくし、お腹をパンパンにした二人は暫く動く事が出来なかった。

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