夜に、また。

駆堂

第1夜。

どうか朝にならないでくれ。


僕が夜の終わりに願うこと。どうか、どうか。誰に向かって?神様に向かって?もし神様がいるんなら、かわいそうな少年1人の願い、無視することなんて出来ないだろう。

──かわいそうな少年、だってさ。自分で言っておいて笑えてくる。涙はもう出ない。僕の瞳はからからだ。僕の心はからっぽだ。

どうか朝にならないでくれ──。


朝が来た。さも当たり前のように。カーテンの隙間から漏れる光が眩しい。嫌いだ。明るいのは、嫌いだ。

「…起きよう」

階段を下るとたちまち親子の会話が聞こえてくる。親子の会話。──僕を除いた、日常の会話。母さんがけらけらと笑う。それに合わせて弟もけらけら、笑う。けらけら、けら。僕の視線を感じたか、その声は止まってしまった。

「…ごめん」

学校に行こう。僕の日常はもう決まってるんだ。もうずっと前から決まってるんだ。まるで同じ日をループしているみたい。体の傷も心の傷も相変わらず増えているけど、でもそれでもそう思わないと、今すぐにでも死んでしまいそうだ。


……どうして死んじゃ駄目なんだっけ。


「おはよう、早いね」

あぁ、そうだこいつだ。僕の唯一の友達。死んでしまいそうな友達。うん、と挨拶を返そうとしてハッとした。今のは誰だ?死んでしまいそうな友達?何を見たんだ僕は。何を見ていたんだ。目の前の空白を見つめながら考える。違う、ここにいるはずがない。



だってあいつは、死んだんじゃないか。

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夜に、また。 駆堂 @xx_kudou_xx

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