(11)おかえり、てぴちゃん!

今日は2025年の9月20日。厳しい夏を超えて夏の終わりを迎えた北海道。

長屋はシュシュと2人のこっこで今日も賑やかです。


この1年たくさんの出来事がありました。くぅちゃん・こうくんとのお別れという、悲しいニュースもありました。


でも、そんな中で雷太や吹雪、しんら。はるおにレイちゃんを始め長屋卒業生の子供達の活躍もたくさんあって、その頼もしく育った姿が、毎回私たちをハラハラさせつつも楽しませてくれましたね。


そして、今日も長屋にはシュシュとつい最近離乳をして、大人への一歩を歩き始めた

2人のこっこ、おすしちゃんとかっかちゃんが元気にいます。

そんな様子を、久しぶりですが少しだけ見守りたいと思います。



「今日も早く、シュシュおばさまと外に出たいですわ」


「う~ん、かっかちゃん今日は夜から大雨で嵐だから、お外は中止みたいですし」


「それは残念です~、おばさまといっぱい遊びたかったですのに」


「かっかちゃん仕方ないでシュ、それより桶のおかわりほしいでシュ」


「やれやれ、シュシュおばちゃんはいつも食べる事ばかりですし~」


「あら、おすしちゃん、立派な大人のお馬になるためにはいっぱい食べなきゃいけないのですわ。シュシュおばちゃんは見本を私たちに見せてくれているのですわ、

ねえ?おばさま」


「そ、そうでシュよ、2人ともいっぱいたべて早く大きくなるでシュよ(ただおなか空いていたのは、ないしょでシュ)」


「はーい、おばさま」


「わかったですし~」


今日は残念ながら、夕方から嵐が予想されていて、しーちゃん達のいる0番への放牧はお休みになったようです。

それでも、シュシュと2人のこっこはなにかとおしゃべりをしていて

すっかり仲良くなったようですね。


そんな、少し退屈そうなお昼が過ぎ去って行こうとする頃

懐かしい蹄の音が、長屋に近づいてきます。

そうです、去年の秋まで長屋の一員だった、てぴちゃんが帰ってきたのです!


「なつかしの我が家デース」


「て、てぴちゃん!どうしたんでシュか?戻ってきたでシュか?」


「ノンノン~雨宿りで一晩だけお世話になりマース、

シュシュさんお元気そうでよかったデース」


「てぴちゃんも、相変わらず元気そうでシュね

そうだ、レイちゃんおめでとうございますでシュ!レぜもがんばってまシュね」


「シュシュさんも、雷太くんに、吹雪、しんらちゃんの活躍おめでとうデース

あ、しんらちゃん早く良くなるといいデスネ」


「ありがとでシュ、てぴちゃん。あの小さい頃心配だった雷太が最近、

すごく頼もしくなったでシュ、今度のレースも楽しみでシュ!」


(かあちゃんにほめられたのら~)


「あれ?なんか今声が聞こえたですし?

あ、てぴさん、わたしおすしといいますし」


「私、かっかといいますわ。よ、よろしくお願いします」


「ワォ!ことしの長屋こっこずはかわいらしいデース

私はてぴ、本当の名前はレポゼッションといいマース

よろしくデース!」


このあと、てぴちゃんも2人のこっことすぐに仲良くなれたようです。


こうして、みんなでお話をしていると時間が過ぎるのはあっという間で

夜は更けていきました。するとやはり天気は崩れ、夜中になる頃には

外が嵐のようで、風の音に長屋のこっこ達も落ち着きません。


「風強いですし~長屋飛んじゃいますし~」


「こわいよ~ママ~」


「こわくないでシュよ~ここにボシュがいますよ~」


シュシュは今年、不運が重なって息子のこうくんを亡くしてしまうという

悲しい出来事がありましたが、今では離乳後の2人のこっこの面倒をよく見ていて

特にかっかちゃんは、シュシュの事が大好きなようですね。


「シュシュさん、すっかり2人の保護者デスネ」


「うん!ママも好きだけど、シュシュさんも大好き~」


「おすしもおばちゃんすきだよー」


「おや?シュシュさん寝ちゃったデース?」


(シュヤ~)


「シュシュさんらしいですわね」


「しかたないですし~寝かせてあげるですし」


「じゃあ、ワタシがアメリカのお歌でも歌ってアゲマース

ワタシはケンタッキーからやってきましたデース♪」


「てぴさん、何の歌ですし!?」


「あ、それママも歌ってました~」


「えっ?かっかちゃん知ってるですし?」


「うん、ウチのママもアメリカから来ましたから」


「ずるいですし~おすしにも教えてほしいですし~」


「おすしちゃんもつづけて~一緒に歌うデース!」


そんなこんなで、少し怖かった嵐の夜もてぴちゃんの

おかげで、こっこ達にも楽しい夜になったみたいですね。

てぴちゃんもすっかり頼もしいママになりました。


そして、朝が来る頃にはすっかり嵐も去って

てぴちゃんは4番放牧地に帰る時間が近づいて、夢の様なひと時も

あっという間に終わろうとしています。


「しーちゃんにも会いたかったデース」


「しーちゃん、とても元気してまシュよ。

そうでシュ!ダヨさんも元気って、ばちょうがいってたでシュ」


「ダヨさん!よかったデース、また会いたいデース」


「そうでシュね、いつか同窓会したいでシュね」


「シュシュさん、うまいこというデスネ、あの頃が

ホントになつかしいデース」


「てぴさん、寂しいですし~またくるですし!」


「てぴさん、また一緒に歌いましょうね」


「アハ!昨晩はとても楽しかったデース」


「え?わたシュ寝ちゃったあとに、なにがあったでシュか?」


「フフ、シュシュさんにはナイショデース」


「ションナ~でシュ」


「ふふふ、ショボンシュシュさんもかわいいですわ」


「シュシュおばちゃん、後でお歌おしえますですし~」


そうこうしていると、お迎えのニキさんが来て、いよいよ

てぴちゃんは帰る時間になりました。


「では、シュシュさん、みんな、行ってキマース!」


「てぴさん、お元気でーまたお歌おしえてくださいねー」


「てぴさん、いってらっしゃーいですし」


「てぴちゃん、来年もいい子産むでシュよ~」


「シュシュさんも頑張っていい子産んでクダサーイ!」


こうして、てぴちゃんは元気に放牧地に向けて出発しました、

てぴちゃんらしく、振り向かずに陽気に歩いて行きます。

シュシュと2人のこっこはそんな背中をいつまでも見送ったのでした。


その時です、一つの希望の「秋の風」がほんの一瞬吹いたような気がしました。


(てぴちゃん、がんばってーまたいつか帰ってきてね!)


そんなみんなの声が長屋に届いたのでしょうか?


それでは、また見守りましょう!



つづく

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リアルダビスタ・擬人化ショートストーリー集 セイカ(ペンネーム:はすみん) @ral20102

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