11-2作品目 ヘブンズキャラクターキリム
「なぁ……ずっと思ってたんだがどういう意図があるんだ?」
俺はいつも通り縄跳びをしながらニケに話しかける。
ニケに修行をお願いしてから2週間。走るスピードは短期間だというのにとても上がっている。
(あんな練習で速くなるとは……一体どんな効果あるんだろ……)
「あれ、説明してませんでしたっけ。まず棒立ちの練習。あれは正しい姿勢を身体に覚えさせる為にやってやした。
次に縄跳び。あれは足の筋肉……えっと……名前は忘れやしたけどなんか太ももを上げる筋肉?を鍛えるやつです」
「大雑把だなおい」
説明も内容も理解度もデタラメだが、効果があるのはたしかだ。にしてもデタラメ過ぎるが。
「ということは最後のやつはフォームを意識させるためのものか」
「そうっす。速さとは正しい動きに宿るものですぜ」
「なるほどなぁ」
俺は特訓の原理がわかったからか、少しやる気が出た。
(よしっ、やるか)
(頑張れ、キリム!)
「はい、お疲れ様でした。ちゃんと寝てくだせえよー」
「おう、ありがとな!」
俺は今日も家の前までおんぶしてもらった。いつかは自分の足であの速さを出したいと思った。
「って、俺は何を目指してるんだ」
あくまで強くなるための手段。あそこまで速くなくてもいいだろう、今のところは。
「あ、キリム……おかえりなさい」
「テル!?こんな夜中にどうした?」
俺が玄関の方に向かうとテルが俺の家の前に座っていた。
テルは俺を見つけるや否や立ち上がり、ジト目で見てくる。
「別に……ニケと仲良さそうにしてたから少し気になっただけです」
「そ、そうか……そういえば最近放課後とか話せてなかったもんな。最近お前何してたんだ?」
「ニケからキリムが修行してること聞いて、私も始めてみたの」
「え……」
テルも修行を?でもニケのやつは言ってなかったし、それに見かけてもない……というか、そもそもテルはスピードがAな筈だ。じゃあ別の修行なのか……?
そう考えていると、テルが何の修行をしているかを教えてくれた。そう……
「花嫁修業を!」
「うっそだろ!?なんでそうなる!?」
「だって私、筋力以外はどれも平均以上ですし、筋力も家事とかしてたら少しは身につくってエルミが言ってたから取り敢えず花嫁修業を」
「筋トレの概念!!」
「うるさいっ!私は……筋トレできるほどの筋力も無いんですぅ!!!」
顔を真っ赤にして叫ぶテル。近所迷惑も脳裏に浮かんだがテルの小さい体ではそこまで響き渡らなかった。
「……なんか、すまん」
「謝られても困るんですけど!?」
「おかえりー……テルちゃんじゃん!一緒にご飯食べるー?」
エルミが食器を並べながら聞く。
「じゃあお言葉に甘えて……」
「うんうん、育ち盛りなんだしいっぱい食べなさい!ほら、キリムも!」
「はいはい」
いつまでこんな日常が続くのか。それはまだわからないけど、取り敢えずご飯を食べることにした。
――――――――――――――――――――――
次回へ続く
朝起きたら主人公になっていたので平和な物語になるよう努力する 十七夜 蒼 @SPUR514
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。朝起きたら主人公になっていたので平和な物語になるよう努力するの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます