戻って来たタヌ助を見ながら、アヤが言った。

「タヌ助くん。」

「はっ、はい。」

「以後、嘘は付かないように。

なかなか、話が前に進まないでしょ。」

「はい、了解であります。」

タヌ助は、キリッとした顔で、アヤに敬礼しながら言った。


「それじゃ、もう一度聞くよ。

タヌ助くんは、どれだけの悪行をしたの?」

「100件以上は固いかと。。。」

「そう。。。

ええっと、話半分として倍の200件。

さらに、タヌ助くんという事を考えると、さらに倍の倍で800件位かな。」

アヤはそう呟くと、大きく頷いた。


その時、アヤにとても良い、ある考えが閃いた。

アヤはニヤニヤと笑いながら、タヌ助を見た。

そのアヤの目を見て、タヌ助は背筋に冷たい物が走った。

「あの、お嬢さん、何でしょうか?」

タヌ助が、少し怯えたような顔で聞いた。


「つまり、こういうことだよね。

タヌ助くんがして来た、悪行と同じだけ良い事をしないと、タヌ助くんもわたしも、離れる事ができない。」

「はい。」

「だから。。。

わたし、タヌ助くんのために、タヌ助くんにして欲しい、良い事をいっぱいお願いするわ。

タヌ助くんは、わたしのお願いを、何でもするの。

そうすれば、わたしはタヌ助くんに良い事をしてもらえるから、タヌ助くんは早く呪縛から解放されるでしょ。」

アヤが、ズイッとタヌ助に顔を近づけて言った。


「つっ、つまり。

わたくしに、お嬢さんの召使に成れ、と言う事ですか。」

引きつった顔で、タヌ助が、アヤに聞いた。

「もう、何をおっしゃるウサギ、いえ、タヌキさん。

お互いに助け合いましょう、っていう事よ。」

アヤが笑顔で言ったが、タヌ助には、その顔が悪魔の笑いに見えた。

そして、それを断る事ができない事を、悟った。


「解りました。

それでは、お嬢さん、よろしくお願いします。」

「よろしくね。

あっ、そうそう、わたしの名前はアヤって言うの。」

「アヤさんですね。

よろしく、アヤさん。」

タヌ助が、嬉しそうに言った。


「ところでタヌ助くん。

一つ聞きたい事が、あるんだけど。」

「はい、何でしょう?」

「さっきから、時々、タヌ助くんの顔が赤くなってるけど。。。

わたしのパンツ見た?」

アヤが、ジッとタヌ助を見ながら聞いた。

「えっ?

いいえ、全然、見てません。」

タヌ助がそう言うと、走って来たアヤのクラスメイトに、思いっきり蹴飛ばされた。

「ああぁぁぁーーー--。」

タヌ助は、声を残し遠くへ飛んで行った。

「あっ、何か蹴飛ばしたけど、まあ良いか。

アヤ急げ、早くしないと遅刻するぞ。」

クラスメイトの男子はそう言うと、急いで走って行った。

「うん、待って。」

アヤも走って校門を潜った。


こうして、アヤとタヌ助の、奇妙な生活が始まった。


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アヤと化け狸 ~ 最悪の出会い 木津根小 @foxcat73082

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