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「ああ、タヌキ大神さま。
今日のおやつは我慢します。
ですから、どうか、この面倒臭いタヌキを、何処かへ連れて行って下さい。」
アヤは両手を合わせ、目を閉じ、強く祈った。
しかし、何も起きなかった。
「だから、無駄だと。」
タヌ助が、赤い顔をして言った。
「あーー、もう。
それじゃ、わたしはどうすれば良いの?」
アヤが、とてもイヤそうな顔で聞いた。
「とりあえず、わたくしの話を最後まで聞いてください。」
そう言うと、タヌ助が赤い顔のまま、話し始めた。
「わたくし、タヌキ大神さまの言われる事が、どうしても納得できず、良く調べて欲しいとお願いしました。
すると、
『わしも信じられなかった。
これ程、悪行を働くタヌキが居るなど、何かの間違いだと思った。
そこで、フォックス探偵事務所に依頼し、調べて貰ったところ。
何と、こんなに沢山の、新たな悪行が見つかったのだ。』
そう言って、また、書類の山を叩いたのです。」
「えーーっ、タヌ助くんって、そんなに悪いタヌキなんだ。」
アヤが、呆れた顔で言った。
「違います。
それらは、全て、身に覚えの無い事!!」
タヌ助が強くそう言うと、また、横から出て来た自転車に、跳ね飛ばされた。
「ああぁぁぁーーー--。」
タヌ助は、また、声を残し遠くへ飛んで行った。
「キャッ、ハンドルが取られて・・・ゴメンなさい。」
そう言って、自転車に乗っていた、中学生の女子が走り去った。
「もう、帰って来なくて、良いよ。」
アヤがホッとした顔で、タヌ助が飛んで行った方を向いて叫んだ。
「ハア、ハア、ハア。
そっ、それで、わたくし、この縫いぐるみに閉じ込められ、こちらへ送られたのです。」
また足元から、タヌ助の声が聞こえて来た。
「やっぱり、無理なのね。」
アヤが、諦め顔で言った。
「それで、どうすれば、タヌ助くんは、わたしから離れられるようになるの?」
「これはわたくしの想像ですが。。。
恐らく、悪行と同じだけ良い事をすれば、タヌキ大神さまに許してもらえて、この呪縛から解放されると思うのです。」
「なるほど。。。
タヌ助くんは、どれだけ悪行をしたの?」
アヤが、ジッとタヌ助を見ながら聞いた。
「ハッキリとは憶えていませんが、多分10件くらいかと。」
タヌ助がそう言うと、走って来た男子小学生に、思いっきり蹴飛ばされた。
「ああぁぁぁーーー--。」
タヌ助は、またまた、声を残し遠くへ飛んで行った。
「あっ、お姉ちゃんゴメンね。
縫いぐるみ、蹴飛ばしちゃった。」
男の子が、少し青い顔をして言った。
「良いよ。
まったく、全然、1ミリも、気にしないで。」
「うん、ありがとう。」
アヤが力強く、笑顔で言うと、男の子は嬉しそうに走って行った。
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