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「わたくし、死んだあと、タヌキ大神さまが居る、タヌキ冥界へ行きました。

そして、その冥界で幸せに暮らせるものと、思っていました。。。

しかし、タヌキ大神さまが、とても怖い顔で、わたくしに言ったんです。」

タヌ助は、とても辛そうな顔をすると、俯いた。

「何て言われたの?」

アヤが、興味深そうに聞いた。


タヌ助は顔を上げると、大きな身振り、手振りで話し始めた。

「『タヌ助よ、お前が生きている時に行った悪行について、こんなに沢山の苦情が来ている。』

タヌキ大神さまはそう言って、山積みになっている書類の束を、叩きました。

そして

『お前のような悪ダヌキを、冥界に住まわす事は出来ぬ。

しばらく、現世と冥界の間を彷徨い、苦しむが良い。』

と、とても嬉しそうな顔で、おっしゃるのです。」

「えー、そんなに悪い事したの?」

アヤが驚いた顔で聞いた。


「いえいえ、わたくし、悪い事などしていません。」

タヌ助がキッパリとそう言うと、突然、横から出て来た自転車に、跳ね飛ばされた。

「ああぁぁぁーーー--。」

タヌ助は声を残し、遠くへ飛んで行った。

「あっ、急にハンドル取られて。。。

ゴメンよ。」

そう言って、自転車に乗っていた、中学生の男子が走り去った。


「あーあ、何処かへ行っちゃった。」

アヤはそう言うと立ち上がり、タヌ助が飛んで行った方を見た。

すると、突然、足元から声が聞こえて来た。

「どっ、何処にも行ってません。」

「キャッ。

えっ、あっちへ飛んで行ったんじゃないの?」

アヤがとても驚いて言った。

「ええ。

でも、タヌキ大神さまに、最初に正体を明かした人から離れられ無くなる呪縛を、掛けられているのです。」

タヌ助はそう言うと、額の汗を拭った。

「そっ、そうなの。。。

じゃあ、わたし、何も見なかったし、何も聞かなかったわ。

それじゃね。。。」

アヤは、少し引きつったような顔で言うと、急いで立ち去ろうとした。


「まっ、待って下さい。

もう手遅れです。

既に、わたくしはこうして戻って来ました。

ですので、お嬢さんが何処へ逃げようとも、わたくしはお嬢さんから離れる事ができないのです。」

タヌ助がそう言った時、既にアヤは全力疾走していた。


アヤは50mほど離れた、交差点の角を曲がった所で歩き出した。

「はあ、はあ、はあ。

もう、大丈夫かな?」

そう言って、後ろを向いた時、足元から声が聞こえて来た。

「ですから、ダメなのです。

どんなに逃げても、わたくしからは、離れられ無いのです。」

タヌ助の声だった。

アヤは引きつった顔で、タヌ助を見た。


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