アヤと化け狸 ~ 最悪の出会い
木津根小
1
アヤは市内の小学校に通う小6女子だった。
少し長い髪に大きな目、可愛い顔立ちであったが、体は痩せ型で小さかった。
今日は友だちのサキが休みのため、一人で学校に向かっていた。
その途中、アヤはタヌキの縫いぐるみを拾った。
10cmほどある、少し大きな縫いぐるみだったが、お世辞にも可愛いとは言えない物だった。
「ははは、なんかブサイク。」
笑顔でそう言いながら、縫いぐるみを拾うと、チョコンと指先で縫いぐるみの頭を弾いた。
「あっ、痛たたた。」
タヌキの縫いぐるみが、声を出した。
「キャッ!」
アヤは驚き、小さな悲鳴を上げると、タヌキの縫いぐるみを放り投げた。
「あうっ、いた、ぐへっ。」
タヌキの縫いぐるみは、悲鳴を上げながら、道の上を転がった。
「まったく、何てことするんですか。」
タヌキの縫いぐるみは、腰を押さえながら立ち上がると、アヤを見ながら言った。
「あっ、あなたは、誰?」
驚きながらも、アヤはジッとタヌキの縫いぐるみを見ながら聞いた。
「タヌキです。」
タヌキの縫いぐるみは、アヤの近くまで歩いて来ると、顔を赤くしながら胸を張って言った。
「見れば分かるよ。
そうじゃなくって。。。」
アヤはしゃがみ込むと、タヌキの縫いぐるみをジッと見ながら言った。
「タヌキおやじです。」
さらに胸を張って、タヌキの縫いぐるみが言った。
アヤは無言のまま、ギュっとタヌキの縫いぐるみを握ると、
「今日は、燃えるゴミの日だから、あのゴミ箱に入れてあげるね。」
と言い、立ち上がった。
「ちょっ、ちょっと待った。
会って5分と経って無い、タヌキの縫いぐるみを捨てるなんて、悪い事だと習いませんでしたか?」
タヌキの縫いぐるみが、慌てて言った。
「そんなの、習って無い。
でもね。。。
呪われた人形は、早めに手放した方が、良いんだって。」
アヤは怖い顔でそう言うと、ゴミ箱に向かって歩き出した。
「本当に、ちょっとストップ。
せめて、わたしの身の上話を聞いて下さい。」
タヌキの縫いぐるみは、必死に訴えた。
アヤは立ち止まると、ジッとタヌキの縫いぐるみを見た。
「どんな話?」
「聞くも涙、語るも涙の、悲しいお話です。」
「ふーん、聞かせて。」
「わたくし、タヌ助と言います。
あの山に住んで居た、正真正銘のタヌキだったんですが、昨日、病気で死んでしまったんです。」
タヌ助は少し離れた場所にある山を指しながら、悲しそうな顔で言った。
「えっ、そうなの。。。」
アヤはタヌ助が、少し可哀相に思えた。
そして、しゃがみ込むと、タヌ助を、そっと道に置いた。
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