私の世界

深山雪華

最後の砦

最後の砦は、砦でも何でも無かった


縋るように送ったメッセージを何度も何度も見返すが返事は来ない



「嘘ばっかり。

やっぱり、世の中ってこんなものなんだ」


酷くかすれた声でそう口にした途端、私の中の何かがプツンと音を立ててちぎれたのが分かった



「死んでしまおう。」


私の決意は本気だった


本気でこの世界からいなくなってしまおうと思った



死にたい理由なんて探さなくても山ほどある


それに、生きていたい理由はどれだけ考えても一つも思いつかなかった


ならば死んでしまおうと思っても何も不思議では無い



まず私はいつもオーバードーズする時に使っていたお薬をいつものように大量に飲んだ


もちろんこれで死ねるとは思っていなかった


他の自殺行為と組み合わせれば死ぬ確率が上がると思ったことと、首を吊って死のうとしていたので、オーバードーズすることで少しでも苦痛を誤魔化そうという考えだった


何度もオーバードーズしているお薬なので、飲んでから効果がピークに達するまでの時間は把握していた


"ピークに達したら首を吊ろう‪"



その時間ギリギリまで私は同じ内容の遺書を何通も書き、思いつく限りあらゆるところに隠した


もちろん写真を撮って複数のクラウド上にも保存する


私の遺書の内容で不都合になる人間に隠蔽されないようにするためだった


内容は私なりの仕返しだった


私が受けた被害を事細かに書き、大人たちの表面だけの対応に対する絶望と、社会的責任をとり社会的制裁を受けるべきだと言う内容だ



いよいよ時間が来た

頭がふわふわして現実感が薄れている


椅子の上に立ち、太めの紐に手を伸ばす


死にたい気持ちは本物なのに何故か震えていて、頻りに歯がカチカチと音をたてていたことを記憶している


勇気を振り絞りそっと紐を首に掛けた


そして…


「ぐっ…」


体験した事の無い激しい頭痛と苦しさ、そして恐怖を感じた


「あっ」


紐を固定していたポールが負担に耐えきれずに倒れ、私の足が床についた



何とか紐を首から外し、ポールの状態を確認すると壊れてはいないものの、1人では元の状態には戻せそうに無かった


戻せても1度倒れている以上、また倒れる可能性がとても高い


諦めるしか無かった


いや、他の方法に変更すれば良かったのだろうが、他の自殺行為は自分ではコントロールできないこと、試したことがないので出来れば手を出したくなかったので消去法で諦めることになった



するとスマホから「ピコン」と音がした


開いて確認する


「ふっ、あはははは」

何も面白いことはないのに笑いが込み上げてくる


今更返事が来た


「そうなんですね。大変ですね。」


たったこれだけ。


あんなに必死に送ったメッセージは誰にも届かなかった


もう、一周まわって冷静になった


頬を熱い何かが伝った

次々と溢れ、こぼれ落ちていく


私が死んだところでこの世界は変わらない


私がいくら遺書を使って叫んだところで何も届かない、何の価値もない


それよりも、生きぬいて私の話を聞いてくれる人を作ろう


そしてその人達に私の心の叫びを聞いてもらおう


いつかこの世界を変えるために













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私の世界 深山雪華 @miyamayuzuha

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