第12話 天才にはなれない

「バカみたいに数が多いなぁ、Gかな?そんなにわらわらと出てこなくてもいいじゃない。そんなに大きな組織だったわけ?」


 明らかに数が多すぎる。

 ただの1組織としては異常な人数。


 これはチャルドちゃんが逃げた方に先回りとかされてそうだなぁ。


「はっはは!くひひ。おめぇやべぇなぁ、その魔力の量はどこから出てきてんだよ?常人の数倍はあるじゃねぇか。

それにその適性属性の多さ、うちに来てくれたら嬉しいなぁ、えぇぇ?どうだ、来ねぇか?」


 これほどに数がいて、この人がまとめきれてる感じもしない。

 いくつかの派閥でもあるのか、それともいくつかの組織の連合か、どっちにしろこれならワンちゃんあるはず。


 煽ってこいつ一人を前に出させたら、こいつの直属の部下っぽい奴らしかすぐには出てこない。

 即席の人員じゃああらが出るって教えてあげること、教えてあげようかなぁ。


「そりゃあいい、内部から破壊できるなら楽に全滅させられそうだね」


「はっ、威勢がいいなぁ。でもそれだけの実力があるから面倒くせぇ。一旦眠らせてやるよ!!」


 来た。

 これだから脳筋は楽だ、上に立つ器じゃないんだよこいつは。


 独りよがりの単細胞にできることは限られる。

 それはなぜか?練習では出ない悪癖、それが本番で露呈することになるから。


「時空魔法・ハーンテットクライシス」


 発動をした瞬間に空間が歪む。

 それは火の上辺の空間がゆらゆらと揺れているかのような。

 そんな自然現象が地球を覆う炎の強さでおこなわれている感覚。


 地面の揺れはない、視覚にのみ訴えかける異常は一部の現実にしか作用しないもの。


 揺れの中心部にしか、作用しないもの。


「あーあ、大半が飛んでいっちゃったね?」


「はぁ…!?これが、人為的…?」


 俺は強い攻撃魔法を放つのが苦手だ、だからなのか移動魔法などの便利系の魔法は得意。

 そこを利用した魔法。


 詠唱が必要な部分は致し方無しとして、威力は完全に異次元。

 読んで字のごとく、異次元。


 この魔法の原理は簡単に言うと、一気に時間を進めて一度戻す、また進めて戻すを複数回行うことでできる時間の隙間。

 そんな隙間を利用した攻撃、いや、攻撃なんて言い方は適切じゃない。


 災害だ。


「はっ、ははっはっは?は?は?」


 視覚的な衝撃から戻った瞬間に気づく、己の変化。

 なくなったのか?右半身の間隔は繋がっている、しかし何も見えない。


 そんな不安と困惑の表情。


「触ってごらん、ないから」


「……ふくっくふくぐぐ」


 時間旅行の弊害、人間の限界の超越、その代償。

 この世から半身の消失。


 それは、感覚が狂うということで、終わりの鐘がなる瞬間だった。


「がっ」


 半分しかない口から泡を吹いて倒れる。


「あーあ、か弱いって大変だね?俺達はさ、天才とは違うんだよ」


 もちろん俺にも代償がある、それが一時的な一部感情の消失。


 感情のうちのどれかを失い、どれかが活発になる。


「急いで助けに行かなきゃ、もしかしたら挟まれたりしてるかもしれないし。俺心配だわ」

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あまりにも働かないから弟にTSさせられて、俺の嫁になれと言われたんだけど…でも百合のほうが良くない? 真堂 赤城 @akagi33229

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