SF世界に行くと思ったら
@ashw
異世界からの帰還
それは、豪華絢爛と言っても過言でもない城の一室、二人の男が話し合っていた。
「いいのか?」
正に王子という男が聞く、
「仕方ないだろ、こんなもん世に出したらそれこそ人類同士で人魔大戦の再現をしかねん」
ペンダントを弄びながら、くたびれたローブを着た男がいう。
ため息をつきながら王子が言う。
「未だ人は、過ぎた力を御せないということか」
「んなもん、いつの時代どこのだれでも、なるときはなる」
「そうだな、全ての人が己の心を最後まで御しきれるわけでない」
「だから、こいつの重要な変換器、増幅器、安定器、貯蔵器は皆回収したし、設計図は軒並み破棄した。もう、残っているのは俺の頭の中だけだ」
トントンと頭を指で突きながら言った。
男から目をそらし、窓の向こうの遠くを眺めながら、王子は言った。
「すまない、あの二人も頼む」
男は、背を向けて歩き出し振り向くことなく片手を上げてわかったと言わんばかりに振った。
それは彼が、帰還する前日の話。
******
そこは都会、ビル群の大通り。
いつもならば静寂と無縁の場所は何一つ物音がしない無音の空間となっていた。
時刻は昼、突如として光が現れた。
輝きが収束すると、男が現れた。
「帰ってきちまったなぁ……」
ぼやいた男は、いかにもファンタジーな服を着た齢二十かそこらといった青年だ。
青年と言うには、いささか動作がおっさんくさいが、彼にとって一時が万事このようであるため諦めている。
見慣れた風景は姿を変えず、けれども何かがおかしい。
気がついた、人だ。
時間は昼間、たとえ平日でも人気が全くないというのはおかしい。
そんな風に考えていると、青年の左右が輝き、その輝きと共に二人の美少女が降り立つ。
「ここがユート様の世界ですか?」
「すごい、精霊の残滓がない。視界に入る全てが人の手だけで構築されている」
二人の姿もファンタジーのそれであり、それぞれ聖職者と魔法使いを体現した服装をしている。
魔法使いの方は、とんがり帽子に長いローブ、その中の着ている服はゆったりとしている。瞳の色は碧、帽子にしまわれた髪の色は黒。全体的に幼く、青年と同い年であるにもかかわらず、年下に見られることがしばし。
名をクーリア。
それに対して、聖職者の方は金髪碧眼の王道の聖女といった風体であり、年下であるにもかかわらず、魔法使いと並ぶと間違いなくこちらを年上として扱うだろう。
なお胸も豊かである。
名をシーリア。
二人とも、未知の世界に目を輝かせている。
そんな二人を横目で見ながら、警戒していると。
『そこの三人、両手を上げてそこにいなさい!!』
遙か向こうから声が聞こえた。
見れば、拡声器を構えた制服姿の少女がいた。しかし、その腰には武器を装備しておりその武器だけが異質だった。
「なんといってるの?」
クーリアが尋ねてくる、青年は答えた、
「両手を上げて、降伏しろって」
「従え……と?」
シーリアが杖を構えながら、ユートに聞く。
「あっちが正義で政府だ。俺たちは異端者だ、抵抗すればこっちで暮らせない」
「わかりました……」
やや不満そうにしながら、シーリアは手を上げた、クーリアとユートもそれに習う。
見れば少女は安堵したように一息つくと、無線機のようなものに話しかけている。
話し合いが終わったようでこちらに近づいてくる。
見れば、日本人形のような女性がセーラー服を着ている。
それが、学生なのか制服なのか不明だが、彼女が何らかの組織に所属しているのは確かだ。
『済みません、規則なので』
そう言って、手錠を掛けられる。
俺だけ、
『なぜ?という顔をしないで下さい、貴方がこの集団の中で唯一意思疎通がはかれること。そして、先程の動きから貴方を拘束することで二人がこちらに危害を加えられないように、言い方は悪いけど人質です』
『わかった、ただ人質とかは伝えない』
『ありがとうございます』
そうして、青年は少女に連れられてこの異様な光景の広がる非日常から連れ出されることとなった。
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