合コン
T市の真ん中あたりに所在するT公園は、桜の絶景スポットだ。
「夜はライトアップされてより華やかになります」
家がすぐ傍のZさんはよく散歩がてら花見をしていた。
「今みたいに密がダメになる前は場所取りもすごかったんですよ」
酔客たちの喧騒と夜桜は中々マッチしますよ、そうZさんは笑う。
その中でたまに気になる人を見かけるそうだ。
「江戸時代のような格好の人とか、鎧武者のような人とかお見かけするんですよ」
彼らは木に登ったりしてるにも関わらず、誰からも注意されていなかった。
「土地のご先祖様たちが見に来ていらっしゃるんですね」
この間、Zさんは面白いご先祖さまたちを見かけた。
深夜に散歩がてら公園の夜桜を見ていた時のことだ。
「モンペはいた女の子たちと軍服きた男の子たちが花見がてら合コンしてましたよ」
夜桜の下、とても和気藹々と楽しそうにしていた。
T公園ができる前の一帯は軍事基地で、空襲で焦土となった。
大勢の人々の命が散った。
「失われた青春を過ごせてるみたいでとても微笑ましかったです」
完
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます