第14話 私の誕生日と小麦の収穫

妹のローズマリーの死を知らされてから一ヶ月弱が過ぎた。

私はまだ妹の死を引きずっていた。


それでもなんとか頑張って、

少しだけ娘のシャルロットの育児を手伝っている。

でもその大半を使用人に任せたままだった。


そんな私の21歳の誕生日がやって来た。

私の為に盛大なパーティーが開かれた。

そして大勢の人達が私を励まそうとしてくれた。


すると私はふと昔の事を思い出した。

それは確か私が7歳になった時の誕生日の事だったと思う




********

「私ね、大きくなったら素敵な王子様と結婚するのが夢なの!」

私はそんな事を妹のローズマリーに話していた。

「わぁ素敵!じゃあ私も王子様と結婚する!」

確か妹はそんな事を言っていた筈だ。


そして私はこう言った。

「それでね!王子様との子供が産まれて、幸せな家族になるの!」

それを聞いた妹は首を傾げながらこう言った。

「幸せな家族?」


それを聞いた私はこう答えた。

「うん!皆が笑顔になれる、とっても幸せな家族だよ!」

その言葉を聞いた妹はこう言った。

「皆が笑顔になれるのね!じゃあ、それはとっても幸せな家族だわ!」

そして私達は二人で笑いあった。

********




そうだ。私は本当に素敵な王子様と結婚できたのだ。

そして子供も産まれて、幸せな家族になれたのだ。

そう思うと涙が溢れてきた。


それを見た夫のウラジーミルが心配そうに声を掛けてきた。

「ナタリー……。辛いのかい?無理せずに休んでもいいんだよ?」


その言葉に私はこう答えた。

「いいえ違うわ。私は今とても幸せな家族になれたと思ったの。そしたら嬉しくて涙が出てしまったの」


それを聞いたウラジーミルは、私を抱きしめてこう言った。

「僕だって幸せだよ。僕はずっとナタリーの事を幸せにできるように頑張るよ」

そして私は黙って彼の事を抱きしめ返した。


妹が死んでしまったのはとても悲しい事だ。

でも私には素敵な夫と可愛い娘がいる。

二人の為にもいつまでも落ち込んではいられないよね。

そう思うと元気が出てきた。




それから数ヶ月が経ち、季節は夏になった。

娘のシャルロットは元気に育っている。

私は育児に本格的に復帰して

そんな娘の成長を側で見守っている。


最近になって娘は立てるようになった。

そしてお乳をあまり飲まず、離乳食を食べるようになった。

そんな我が子の成長を見られるのはとても幸せだった。


今日はもうすぐ1歳になる娘を連れて、小麦の収穫を見学している。

小麦畑にはとても沢山の小麦が実っていた。


それを見た夫のウラジーミルは笑顔でこう言った。

「やっとナタリーとの約束を果たせたよ」


その約束とは小麦が豊作になったら結婚するという物だろう。

結局それよりも前に結婚する事になったのだが。

もしかすると彼はずっとその事を気にしていたのかもしれない。


そんな彼の努力の成果が畑一面に実った小麦だ。

その光景を見ていると私まで幸せな気持ちになれた。

黄金色の小麦畑は、私達家族を祝福してくれている様にも見えた。

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