第14話 私の誕生日と小麦の収穫
妹のローズマリーの死を知らされてから一ヶ月弱が過ぎた。
私はまだ妹の死を引きずっていた。
それでもなんとか頑張って、
少しだけ娘のシャルロットの育児を手伝っている。
でもその大半を使用人に任せたままだった。
そんな私の21歳の誕生日がやって来た。
私の為に盛大なパーティーが開かれた。
そして大勢の人達が私を励まそうとしてくれた。
すると私はふと昔の事を思い出した。
それは確か私が7歳になった時の誕生日の事だったと思う
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「私ね、大きくなったら素敵な王子様と結婚するのが夢なの!」
私はそんな事を妹のローズマリーに話していた。
「わぁ素敵!じゃあ私も王子様と結婚する!」
確か妹はそんな事を言っていた筈だ。
そして私はこう言った。
「それでね!王子様との子供が産まれて、幸せな家族になるの!」
それを聞いた妹は首を傾げながらこう言った。
「幸せな家族?」
それを聞いた私はこう答えた。
「うん!皆が笑顔になれる、とっても幸せな家族だよ!」
その言葉を聞いた妹はこう言った。
「皆が笑顔になれるのね!じゃあ、それはとっても幸せな家族だわ!」
そして私達は二人で笑いあった。
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そうだ。私は本当に素敵な王子様と結婚できたのだ。
そして子供も産まれて、幸せな家族になれたのだ。
そう思うと涙が溢れてきた。
それを見た夫のウラジーミルが心配そうに声を掛けてきた。
「ナタリー……。辛いのかい?無理せずに休んでもいいんだよ?」
その言葉に私はこう答えた。
「いいえ違うわ。私は今とても幸せな家族になれたと思ったの。そしたら嬉しくて涙が出てしまったの」
それを聞いたウラジーミルは、私を抱きしめてこう言った。
「僕だって幸せだよ。僕はずっとナタリーの事を幸せにできるように頑張るよ」
そして私は黙って彼の事を抱きしめ返した。
妹が死んでしまったのはとても悲しい事だ。
でも私には素敵な夫と可愛い娘がいる。
二人の為にもいつまでも落ち込んではいられないよね。
そう思うと元気が出てきた。
それから数ヶ月が経ち、季節は夏になった。
娘のシャルロットは元気に育っている。
私は育児に本格的に復帰して
そんな娘の成長を側で見守っている。
最近になって娘は立てるようになった。
そしてお乳をあまり飲まず、離乳食を食べるようになった。
そんな我が子の成長を見られるのはとても幸せだった。
今日はもうすぐ1歳になる娘を連れて、小麦の収穫を見学している。
小麦畑にはとても沢山の小麦が実っていた。
それを見た夫のウラジーミルは笑顔でこう言った。
「やっとナタリーとの約束を果たせたよ」
その約束とは小麦が豊作になったら結婚するという物だろう。
結局それよりも前に結婚する事になったのだが。
もしかすると彼はずっとその事を気にしていたのかもしれない。
そんな彼の努力の成果が畑一面に実った小麦だ。
その光景を見ていると私まで幸せな気持ちになれた。
黄金色の小麦畑は、私達家族を祝福してくれている様にも見えた。
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