第10話 突然の悲報&戦争の火種

それから更に数ヶ月が経過した。

冬が来て新しい年になった。

娘のシャルロットが産まれてからは約半年が過ぎていた。


シャルロットはすくすくと成長している。

最近になって歯が生えてきた。

なのでお乳を吸われる時に少し痛かったりする。

でもそれも我が子の成長の証だと思うと嬉しかった。


夫のウラジーミルは相変わらず仕事で忙しそうだった。

でも夜は私とまた愛し合ってくれる様になった。

私の妊娠と子育てでお預けだったせいか、

それは以前よりも激しかった///


私は今とても幸せだった。

しかし、そんな私に突然の悲報が飛び込んできた。

それは私の父様のカリンルカ国王が急死したという知らせだった。


私は驚きそして悲しんだ。

とても厳しい父親で

私の事を政略結婚の為の駒だと考えている様な人だったが、

それでも肉親には違いないからだ。


その死因ははっきりしないが、心臓発作ではないかとの事だ。

ある日突然胸を抑えながら苦しみだし、そのまま倒れて息絶えたらしい。


その葬儀は既に終わってしまったという。

私も参加したかったが

カリンルカ王国へは馬車でも二十日ほどかかる。

なので、こうなってしまったのも仕方がないだろう。


私はせめてもの手向けになればと思い、

祖国に手紙と贈り物を届けて貰う事にした。

贈り物は、父様が好きだったルビーの宝石だ。


私は涙を流していた。

そんな私を夫のウラジーミルは慰めてくれた。

私は少しだけ元気が出た。


それに今は娘のシャルロットもいる。

二人の為にも落ち込んでなんていられないよね。

私は心の中で父様に別れを告げ、日常へと戻って行った。




ーーーーーー

それより二十日ほど前。

カリンルカ王国の王都では

国王の葬儀の準備が進んでいた。

それは妻であったステラ王妃が中心となって進められていた。


その葬儀には驚くべき点があった。

それは娘である二人の王女と

その夫が参列しない予定だという事だ。


第一王女のナタリーは

少し遠い国に嫁いだので、

それも仕方がないのかもしれない。


だが第二王女のローズマリーと

その婿のアレックスは、

カリンルカ王国の一部となった

旧ラナキタク王国領に滞在している。


そこからカリンルカ王国の王都へは

急げば一週間ほどで辿り着けるだろう。

それにも関わらずその二人をステラ王妃は参列させないつもりだ。


これは明確な意思表示であった。

カリンルカ王国の新国王はまだ赤子である第一王子レオンとし、

国の実権はその母であるステラ王妃が握るという決意の現れだ。


カリンルカ国王の死は本当に突然だった。

その為、遺言状は残されていない。

なので次の国王が誰になるのかは、

はっきりしていない状態だった。


その為ステラ王妃はこの様な強硬手段に出たのである。

それにレオン王子を次の国王にするのは

亡くなったカリンルカ国王の願いでもある。


なので娘婿であるアレックス王子を排除して葬儀を行う事で

新しい国王は第一王子のレオンだと国内外にアピールするつもりだ。


だがアレックス王子は国王になりたがっている。

このままだと最悪の場合は内戦になるだろう。


しかし、それもステラ王妃は覚悟の上であった。

それだけ王妃はレオン王子を新国王にする事に拘っていたのだ。

ーーーーーー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る