第11話 アレックス王子の憤慨と捨てられない野望

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その数日後。

カリンルカ王国の王都で

国王の葬儀が盛大に行われた。


その葬儀に参列した王族は

ステラ王妃とまだ赤子である第一王子レオンだけであった。


王女やその婿を参列させずに国王の葬儀を行うのは異例であった。

その為、国民はレオン王子を新たな国王だと認識する様になった。

それはステラ王妃の狙い通りであった。




一方その頃。

国王の死をようやく知ったアレックス王子は憤慨していた。

それは彼にとって邪魔だったカリンルカ国王が亡くなったが、

その葬儀が既に行われたという知らせを聞いたからだ。


しかもその死を伝えるのを意図的に遅らせた疑惑まである。

そのせいで彼は葬儀に参列する事ができなかった。


このままでは国民はレオン王子を新国王だと認めるだろう。

それは彼にとって一番避けたい事態だった。

しかしそれは現実となりつつある。


一方、妻であるローズマリー王女は父の死を悲しんでいた。

彼女にとってはカリンルカ国王は

愛するアレックス王子との結婚を認めて貰った恩人でもある。


なので客観的に見れば良い父親とは言い難い人物である、

カリンルカ国王の死に対して彼女は涙を流していた。


そんなローズマリー王女を

夫であるアレックス王子は慰めた。

それは王女の婿として迎えられた自分には

次期国王になる資格があると主張できるからであった。


だがローズマリー王女は彼のそんな魂胆を知らないので、

愛する人に励まされたと素直に喜んだ。

それによって彼女の心は救われたのである。




それから数日後。

アレックス王子は妻であるローズマリー王女にこう言った。

「今から二人で王都に行って前国王の墓参りをしよう。そして新国王のレオン陛下に忠誠を誓おう」

その言葉にローズマリー王女は素直に従った。


しかしその言葉はアレックス王子の本心では無かった。

彼は新国王に忠誠を誓う気など全くなく、

自分が王になる野望を抱いたままであった。


彼は新国王を亡き者にする為に動いている。

その為に数日前に彼の祖国であるアンバル王国に密偵を送った。

それは新国王襲撃計画に協力して貰う為だ。


その新国王襲撃計画とはこの様な物であった。

まず新国王に謁見するという名目で軍を引き連れて王都に行く。

そして同じく謁見名目でアンバル王国からやって来る軍隊と合流する。

その後、新国王がいるカリンルカ城に夜襲をかけるという計画だ。


その計画が成功する見込みは高いとは言えないだろう。

それでも彼は王になれる望みを捨てなかった。

それだけ彼は国王の座に拘っていたのだ。


アンバル王国の第二王子である彼は、

国王になる為にカリンルカ王国に婿としてやって来た。

だからそれだけは絶対に譲れないのである。


だが失敗すれば処刑されるだろう。

それはまさに命がけの計画であった。

そして計画の実行の日は着実に迫っていた。

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