第4話 月日は巡り&妹の結婚式とその後の暗雲
そして月日は巡り、私の19歳の誕生日になった。
私はすっかりこの国での生活に慣れていた。
それに小麦についても詳しくなったつもりだ。
ウラジーミル王子とも仲良くやれている。
彼とは小麦の話をしてばかりだが、
そんな日々がとても楽しかった。
彼が笑顔を浮かべると
私も自然と笑顔になれた。
私は心の底から笑える日々を過ごしていた。
彼と過ごすのはとても楽しかった。
私は彼に心惹かれているのかもしれない。
小麦の品種改良も順調に進んでいる。
今年は近隣の国からも植物学者を呼んで意見を聞いた。
それは私の提案と呼びかけによって実現した事であった。
それに加えて去年の失敗の経験もある。
だから今年は上手くいくと私は信じている。
19歳の誕生日から数日後。
私は自ら小麦畑の世話をしていた。
そんな私にウラジーミル王子が声を掛けてきた。
「ナタリー。そろそろ休憩にしようか?」
私はその言葉に頷いた。
私達は一緒に昼食を食べる事になった。
すると彼がこんな事を言ってきた。
「すまないねナタリー。王女である君にこんな事を手伝わせてしまって」
私はこう答えた。
「謝らないでください。これは私が好きでやっているのですから。それにとっても楽しいですよ」
そう言って私は笑顔になる。
それを聞いた彼も笑顔になった。
そしてこう言った。
「ありがとうナタリー。君は僕の最高のパートナーだよ」
その言葉を聞いた私はドキドキしてしまった。
やはり私は彼の事を愛しているのだろうか?
彼の事はとても尊敬しているが、
愛しているのかは自分でも分からなかった。
でも彼と結婚したら、一緒の部屋で寝る事になる。
そしたらもっとドキドキするだろう。
そんなドキドキに私は耐えられるのだろうか?
私は少し不安になってしまった。
すると彼はこう言った。
「不安なのかい?ナタリー」
私はこう答えた。
「ええ。少しだけですけれど」
私がそう言うと、彼は自信に溢れた表情でこう言った。
「大丈夫だよナタリー。今年の小麦作りはきっと上手くいくよ」
私が心配しているのはそこじゃないのだけれど……。
でも彼の表情を見ていると不安なんて吹き飛んでいった。
彼となら結婚してもきっと上手くやっていけるだろう。
そう思った私は満面の笑顔でこう言った。
「そうですね。きっと上手くいくと私も信じています」
すると彼も笑顔になった。
そして彼はこう言った。
「そうだね。じゃあそろそろ作業を再開しよう」
私は「はい!」と元気よく答え、畑仕事を再開した。
ーーーーーー
一方その頃。
カリンルカ王国では盛大な結婚式が行われていた。
それは第二王女のローズマリーの18歳の誕生日に合わせたものだった。
彼女は愛する者と結婚できてとても幸せだった。
その為に姉のナタリーを陰謀で貶めたが全く後悔はしていなかった。
お相手であるアレックス王子もとても幸せだった。
それはアンバル王国の第二王子に過ぎなかった彼が
カリンルカ王国の次期国王に事実上決まったからだ。
その為に彼はこの国に婿に来たのだ。
彼はローズマリー王女の事を特に愛してはいなかった。
だが別に嫌ってもいなかった。
むしろ自分を王にしてくれる存在だと感謝していた。
だから曲がりなりにも夫婦として過ごす覚悟ができていた。
そして結婚式は無事に終わった。
その後夫婦となった二人は一夜を共に過ごした。
二人はそれぞれの思惑を抱えつつも幸せだった。
しかし、そんな二人の関係を揺るがす大事件が程なくして起こった。
それはローズマリー王女の母であるステラ王妃の懐妊発覚である。
もし誕生する子供が男子なら、それはカリンルカ王国の第一王子となる。
そうなれば次期国王に選ばれるのはその子供かもしれない。
それは王になる野望を持ってこの国に婿に来た
アレックス王子にとっては致命的な問題であった。
だがその事を彼の妻であるローズマリー王女は知らなかった。
彼女は彼が王になりたいと思っている事を全く知らず、
ただ愛する人と過ごせる喜びを味わっていた。
だがたとえ知っていてもどうしようも無かっただろう。
現王妃を陰謀で失脚させるのは困難を極めるからだ。
アレックス王子はただひたすらに祈った。
ステラ王妃が身ごもっているのが王子ではなく、王女である事を。
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