6-14 祈りの燈
あの時こうしていたら、もっと違う結果になったのではないか。そればかりが頭の中を駆け巡る。結果的に、
一方で疫病は都から消え失せ、
そんな中、
「
「良いと思う。俺たちも手伝うよ」
本当!? と
「どうしてひとりでこんな所に?」
紺青色の上衣下裳に藍色の広袖の羽織を纏い、椿の耳飾りをしている
「それは······ええっと、実は、
「
そうなの! とまた
「俺にも君と同じ歳の妹がいるんだ。
言って、
「わ、私! 頑張りますっ」
「え、ああ、うん? で、お願いってなに?」
「あ、そうだった! はい、実は、」
****
数日後。
都の至る所で
一時的に都の灯りを消し、代わりにその
「綺麗だね。俺、こんなの見たことないよ」
ゆっくりと宙に浮いていく、この地の人の数だけある祈りの燈たちに、目を奪われる。他の灯りがまったくないため、余計に美しく闇夜を照らしているのだろう。
「みんなの願いが、祈りが、届くと良いね」
「君のも、飛ばすといい」
まだ手の中にある
「なんだか、怖くて、」
「怖い、とは?」
祈りを込めて書いた文字を指でなぞって、
「俺なんかの祈りが、天に届くかもって思ったら、なんだか、さ」
下ろしたままの少し癖のある髪の毛の先は、屋根の上に付きそうで付かない。いつものように頭の天辺でひとつに括らず、左右ひと房ずつ括られた髪の毛を、後ろで軽く赤い髪紐で結っている。
黒い羽織には左右の袖の下の部分にだけ、銀色の糸で描かれた小さな胡蝶が二匹と、山吹の花枝の模様が入れられていて、中に纏う赤い上衣が映える。
膝を抱えるように座り、手の中の
「君の祈りも願いも、天ではなく私が叶えるから心配は無用だ」
「······そっか、そうだったね」
真面目な顔でそんなことを言う
(怖いものなんて、なにもない······君が傍にいてくれるから、)
そ、とすぐ右隣にいる
「
「君が望まなくても······そうしていた」
頬に触れて。確かめるように、その翡翠の瞳を見つめる。
祈りの燈の下で、何度でも誓う。
何度生まれ変わっても、必ず君を見つける。
君の傍にいる。
君の隣が、いい。
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