6-6 家族
十五歳の誕生日を迎えた日。朝餉の途中で母と父、姉たちの前で深く頭を下げ、決意を言葉にする。ずっと前から決めていたことで、それを曲げる気はなかった。
「母上、父上、姉上たちも。今までお世話になりました。俺は、今日、この日をもってこの邸を離れ、旅に出ます」
ぶっと父は口に含んでいた汁物を吹き出し、母は「あらあら」と口元に手を添えて目を丸くし、四人の姉たちは「ええっ!?」と驚き、大きな声を揃ってあげた。
いや、そういう反応になるだろうことは薄々予想はできていた。末っ子でたったひとりだけ男として生まれた自分を、家族全員、一族総出で、可愛がってくれたのだ。
現宗主に子はおらず、その妹の
その中でも前の
「こ、
邸にいることが多い父は、末の子である自分と母よりも長い時間過ごしていたため、その急な申し出に動揺していた。
「
「けど、
あの日、
それはもうお伽噺でも語るかのように、何度も何度も。
「それでも、捜し出して、傍にいてやりたいんです。
それが、自分の役目だと、信じて疑わなかった。
十五歳になるまでは、一族の掟で離れることが叶わなかったが、今、この時からは違う。だからすぐにでも動き出せるように、ずっと準備をしてきたのだ。だが自分が「
逆に言えば、それのどれかを破れば解放される。
呪いに似た禁呪なのだと、言っていた。
「
大袈裟に五歳上の
「まあまあ。
おっとりと話しながらも怖いことを口にする七歳上の
「もう決めてしまっていることを私たちがどうこうできることではないわ。私も協力するわよ。
九歳上の
「ふふ。みんな可愛い弟が心配なのよ。だから、どうか無理だけはしないこと。ひとりでどうにもならない時は、大人を頼りなさい。あなたは昔からなんでもひとりでやってしまうから、」
十二歳上の
「
十五年もの月日が経ち、
幼い頃からほとんど表情が変わらず、口数も少なく、笑うこともなかった
最初の転生先がここで、本当に良かったと思う。
「
本当に、どれだけの愛情をこのひとたちは自分にくれるのだろう。
その日、
春。
思えば、出会ったのも別れたのも春だった。
十五回目の季節が廻り、今、再び動き出す。
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