6-4 死と生と
それは、遠い遠い昔の話。
忘れもしない、あの
黙っていても威厳があり、細身で背も高く迫力美人な
宗主とは真逆で活発そうな明るい表情の女性で、誰からも愛されそうな大きな瞳の可愛らしい顔をしている
彼女の腹は大きく、五人目の子供がその中に命を宿していた。他の四人の子供たちは下の子が五歳、真ん中の子が七歳と九歳、上の子が十二歳という、子沢山なひとだった。
あの陣が
五大一族総出で、
野営の前で、
「
「姐さん······
「
「
大量の血で赤黒く染まった藍色の衣。何があったかを問うまでもない。あの弟の事だ。
宗主たちだけに告げられた策。その通りに、
四神の加護も恩恵も、ある意味なくなり、新しい仕組みでの穢れの浄化が始まる。
「そんなの、嘘だよ」
だって、まだあたたかいのに。
いつもはほとんど表情が変わらないのに、笑ってるように見える。あんなに深い傷を負って辛いはずなのに、こんな穏やかな表情で眠っているわけがないのだ。
「
「······泣く? 俺は、ひとじゃない。涙なんて、出ないよ」
それは、嘘。ただの強がりだった。
「なら、私の涙がお前の涙だ」
元気な赤子の声だった。
「
もちろん、その魂は真っ白になってしまう。別の命を授かり、別の人間として生まれる。
それが、魂の輪廻。
そこに
「魂が迷ってしまう前に、
「………俺、は」
できることなら、このままずっと、
間違っていると、解っている。
離れたら、もう、二度と、逢えない。けれども。
「姐さんに、······従う」
それでも、
いつか、また、同じ魂に出逢うことが叶うなら、それを希望にして。
その身体は、犠牲になった他の公子たちの亡骸と並べられ、後でそれぞれの地に戻り弔われるのだ。
「おいで、」
赤子の声は泣き止むことなくその場に響いていて、まるで誰かを呼んでいるかのようだった。
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